2004.Mar.28
I Shall Be Released
2004年3月28日、ニュー・アルバムの完成を祝うプライヴェートなパーティーが佐野のオフィスで開かれた。Dr.kyOn、佐橋佳幸、井上富雄、古田たかし、山本拓夫という、いつものメンバーをはじめ、EPIC RECORDSのA&Rやレコーディング・エンジニアなど、アルバム制作に関わった人たちが集まった。
十数人の内輪の関係者のみが参加した小さな集まりだが、新しいベイビーの誕生を祝う大切なパーティーだ。2001年1月のレコーディング開始から3年以上もの年月を費やしたニュー・アルバム。ようやく辿り着いた、という想いがここにはある。
完成したばかりのサンプルCDを佐野自身がプレーヤーにセットし、PLAYボタンを押す。サウンドが流れ出た直後、ミュージシャンたちがスピーカーの前に集まり、そのサウンドに耳を傾ける。オーディオとリンクしているコンピュータのディスプレイには収録曲の正式タイトルが並んでいるが、仮タイトルしか知らないミュージシャンたちにはどれがどの曲なのか、まったくわからない。それでも曲が始まれば、誰かが気づく。
たとえば或る曲の場合、最初に気づいたのは佐橋だった。「これは『NGA』だよ」と佐橋。「え、これが?」「うん」「あ、ほんとだ」「あ、そうか。思い出した」といったような会話がミュージシャンたちの間で何度も繰り返される。言ってみればプロフェッショナルなイントロ・クイズだが、これがとても楽しい。
3年前にレコーディングして、その後、ライヴで披露していない曲の場合、さすがのミュージシャンたちもすっかり忘れていたりする。たとえば山本拓夫ならではのフリーキーなサックスのブロウを聴きながら、本人が「吹いた記憶がない」などと呟いているのがおかしい。
ミュージシャンたちがオーディオセットの前でニュー・アルバムを聴いている間、佐野は軽いステップで踊るように歩きまわりながら「こんなサウンドは他じゃ聴けないぜ」なんて呟いている。今夜の彼は本当にうれしそうだ。
シャンパンで乾杯した後、ワイン、ビールなどを飲みながら、そして、ニュー・アルバムを聴きながら、それぞれに語り合う。佐野は新曲のエピソードを披露し、ミュージシャンたちもレコーディング中の出来事について語り合う。このアルバムの制作に関わった者だけが味わえる贅沢な時間。
夜が更けても、話は尽きない。
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