2015年に聴く「境界線」や「新世界の夜」
木村ユタカ
僕にとって佐野元春のニューアルバムを聴くという行為は、神聖な“儀式”みたいなものだといっていい。
ステレオの前のベスト・ポジションに座って、ブックレットを眺めながら、一曲一曲、そのリリック、メロディ、サウンドと向きあい、そこに隠されたメッセージを感じ取る、とても神聖な行為なのだ。
思えば、十代の頃に聴いた『VISITORS』から、僕はこうした行為をずっと繰り返してきた。
なぜそうしてきたのか? たぶんそれは、自分自身が歩むべき方向の確認作業なのだと思う。
自分の生き方であったり、考え方、社会との関わり方などに悩んだり迷ったりしたとき、僕は佐野元春の音楽に耳を傾けてきた。そして、人生をサヴァイヴするための大事なヒントをもらってきたように思う。
だからこそ、日本が大事な転換点を迎えつつある2015年に聴く「境界線」や「新世界の夜」は、特別な響きを持って僕に訴えかけてくる。
答えが自分たちの心のなかにあることを、忘れてはならない。
佐野元春というアーティストは、バンドを作るたびにピークを形成してきた。
THE HEARTLAND、THE HOBO KING BANDを経て、THE COYOTE BANDと制作した『COYOTE』、『ZOOEY』、そして『BLOOD MOON』の三部作。
何度目かのピークに立ち会えたよろこびを感じながら、ビートの心地よさに身を委ねる。この瞬間、その至福に抗うことなんて、僕にはできっこない。
このアルバムと出会えたことで、自分はまだなんとかやっていけそうだ。
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