現代への警鐘
長尾 充

 元春はいつだって時代に警鐘を鳴らし続けていた。『BLOOD MOON』ではいつものチャイムが、サイレンに変わり、鳴り響いてるかのようだ。

 それは、ジャケットに象徴的に示されている。私たちの文明がどれ程脆いものか、絶対安全と言われていた原発でさえ、自然の前では簡単に壊れてしまったではないか。

 全体的な印象は初期のアルバム『SOMEDAY』に近かった。オムニバス形式の映画を見終えたような余韻が残る。それぞれの人間ドラマがあり、最後の「東京スカイライン」で結実する。

 メッセージ性に於いてはアルバム『Visitors』に一番近いと感じた。未来を予見し、サイレンを鳴らしている点は共通しているだろう。アルバム全体を通してのテーマは「文明の崩壊」だろう。

 アナログ盤に針を落として初めから終わりまで聴くのがベストの味わい方だと思う。カーステレオでボリューム全開で鳴らすのも良いと思う。

 ピカソが衝動的に「ゲルニカ」を描いたように、真のアーティストである元春も、時代の危機を感知し、それを直接的でなく、それぞれの楽曲において、登場人物に語らせて来たが、今回のアルバムでは時代の必然性により、言葉は痛烈になっている。

 コヨーテバンドの演奏は更に成熟し、息づかいや表情までも浮かんできそうな程だ。味わいのある演奏だと思う。リズムは迫力満点で、魂が揺さぶられる。ピアノは繊細で、胸がキュンとするし、ハモンドオルガンの響きにイマジネーションが掻き立てられる。ツインギターは、印象的でインパクトのあるフレーズを奏でてくれる。生き生きとした演奏なので、唄っているという表現に近いかもしれない。

 『BLOOD MOON』は現代人が今一度、文明の危機を回避する為にも、前向きに反省し、これからをより良く生きていく為にも、必然なアルバムだ。