日本語が突き刺さる
池内克典

 久しぶりに興奮した。

 COYOTEからZooeyに至るところで、私は元春さんの言葉に?がついていた。それは(失礼ながら)青くさかったんだ。実際にCOYOTEの評論の時に書かせていただいた表題は『荒地を青くさく往かないか』だった。そしてZooeyでは投稿しなかった。何故か?それはたぶんスーっと吸収しただけだったからだろう。もちろんいろいろ感じた。私が一番好きだった元春さんを思い出したのは『ポーラスタア』。シビれた。しかし他をひっくるめての何かが書けなかった。自分も歳をとってしまったからだろうと思っていた。もう、彼とか彼女とか、いいや、って感じになっていたのかもしれない。

 しかし今作Blood Moonは違った。のっけからやられた。シングルにもなった『境界線』。これまでの様々な元春さんの音と言葉の集大成というかアンサーソングと言うべきか。「やった!」とガッツポーズしてしまった。そしてアルバム表題曲、敢えて日本語にした『紅い月』。言葉は絶望感が漂うけれど、結末も幸せは感じないけれど、でも、なんだろう、泣いてしまった。(でも、じゃない、そのままか。)

 アルバム全編に漂う今の日本を政治をモラルを憂う曲たち。そんな中でも、たまらないのは『優しい闇』だった。『優しい』と『闇』、物凄く相反するような言葉をつなげてしまった。『優しい』だったら続くのは『光』とかじゃないのか。『闇』の前には『悲しい』とかつくんじゃないのか。元春さんにしてやられた。

 「素敵なことは素敵だと無邪気に笑える心」はもうないのかもしれない。でも「ひとつだけ言えること、この心どんな時も君を想っていた」んだな、そして今も想っているんだな、たぶん。最後に「炎の人に逢った」って、それはないよ元春さん。まだまだ出てくるんですね、そういう言葉が。ライヴも楽しみだけど、アナウンスで聞いた次回作もそんなに遠くはないとのこと。そこでも、とめどない言葉の数々、待っています。