ハートランドからの手紙#185
掲載時:2005年6月
掲載場所:TSUTAYAオンライン「佐野元春」スペシャル・ウエブサイト
掲載タイトル:「佐野元春」特集サイトに寄せて

 こんにちは、佐野元春です。

 TSUTAYAオンライン「佐野元春」スペシャル・ウエブサイトに訪れてくださったみなさん、どうもありがとう。

 約1年に渡る特集、僕自身が語る「THE SUNライナーノーツ」、そして「80年代シングル・ライナーノーツ」。楽しんでいただけましたか。

 普段、自分の曲についてじっくり語る機会もなく、いつかやってみたいと思っていたことだったので、今回それが実現できたことはとてもうれしかったと思います。

 曲というのは不思議で、いったん自分の手元を離れてしまうとその先どんどん進化していってしまいます。だからこうしてその曲を作った当時のことを思いだしながら、自分が立っていた時間、そしてファンのみなさんがいた場所をふりかえってみる、というのはほんとうに意味のある、貴重な体験でした。

 また、ブログ形式というのも刺激的でした。僕がレコーディング・アーティストとして始めた1980年といえばまさにインフォメーション・エイジの入り口でした。今のようなインターネットはありませんでしたが、当時の先鋭的なユース達は、通信ネットワークが私たちの生活を変革するだろうと直感していました。

 80年代は同時に、日本の経済が好調気を迎え社会は金ピカの拝金主義が横行しました。そんな景色を揶揄して僕は「何てステキなスーサイド・ハネムーン」なんていって斜に構えていました。

 そんな中で発表してきた80年代のレコード。若葉のためのロックンロール。「アンジェリーナ」、「ガラスのジェネレーション」、「サムデイ」、「ダウンタウンボーイ」。どの曲にも僕やファンの思いがあり、出会いがあり、別れがあり、夢があり、時代があった。

 そして「THE SUN」というレコード。ある時代に多感な頃を過ごしどうにか自立を遂げた僕たち。成長の物語。目まぐるしく変わる景色の中にあって、wisdom, freedom、智慧とユーモアで武装。「ダイジョウブ...」、という '彼'や'彼女' に贈った僕からの最新メッセージ。 アダルト・オルタネイティブのためのロックンロール。誰も歌ってくれないから自分で作って唄ってみた。どうかな?

 こんな時代に「希望」についての歌を唄いたかった。そしてできるだけクレバーでいること。たかがロックンロールにできることはそんなことぐらいなのだけれど、それがどんなに大切で困難なことかよく知っている。

 「希望」についての歌を唄いたい。そしてできるだけクレバーでいること。

 僕は続く。

2005年6月 佐野元春


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