09 | イベント「All Together Now」
1984 -1985



 1985年6月15日、観客で埋めつくされたスタンド席がこのイベントの規模の大きさを物語っていた。代々木国立競技場を舞台に国際青年年を記念して開催されたイベント「All Together Now」は、この時点までの日本のロック、ポップスの総決算だと言ってもいい。

 吉田拓郎を司会に据え、オフコース、アルフィー、財津和夫、南こうせつなど、いわゆる70年代ニューミュージック系のアーティストが代わる代わる出演。ここでの佐野元春は日本のロックの新しい担い手としての存在感を強くアピールした。

 日本語のロックが産声を上げた時の重要なバンド、はっぴいえんどの奇跡的な一夜限りの再結成というニュース性と、佐野らニュー・アーティストの台頭が目立ったこの夜の出来事は同時に“70年代フォーク、ニューミュージックの終焉”と評されもした。

 イベント最後のブロックで佐野元春の登場とともに観客は一段と熱気を帯びた。その場に居あわせた若い聴衆たちにとって、佐野はまさに新世代を象徴する若きヒーローだった。この夜の佐野は一曲目に、国際青年年のテーマとなってヒットした「ヤングブラッズ」をハーモニカから始まるスロー・バージョンで披露、以降「ニューエイジ」など3曲を演奏、途中からサザンオールスターズを迎えて、スモーキー・ロビンソンのカバー曲などロックンロール・メドレーをセッションした。

 佐野同様、当時の新しい日本のロックの申し子である桑田佳祐とひとつのステージで並んだという事実。それは時代の流れが70年代フォーク、ニューミュージックから佐野や桑田を筆頭とする80年代ロック、ポップスへと変わったことを意味する歴史的な瞬間でもあった。

(東 雄一朗)



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