01 | Driving For 21st Monkey
1999-2000



 1999年3月13日、佐野元春の誕生日の夜、赤坂ブリッツで開催された、結成14年目にして初めてのファンクラブ・メンバー限定ライヴ・イベント。「Driving For 21st Monkey」。


フォトグラファー:岩岡吾郎
 

 この夜のステージの上で佐野自身が「僕はこれまでファンクラブのみんなに対しては不親切だったかもしれない。だって他のミュージシャンは、ファンクラブを結成すればこういったイヴェントを毎年のようにやっているものなんだろう?」と言っていたように、ファンクラブ限定のアピアランスは佐野元春の19年に渡るキャリアの中でも初めての試みだった。

 19年もの間、佐野をサポートしてきたファンの「目に見えない支援」に対する彼からの感謝の気持ちがそこには込められていた。そして、ファンは彼の誕生日を祝福するために全国から集まって来た。

 この夜のセット・リストはバースデイ・パーティーの主役でもある佐野と彼のファンのために用意されたものだ。ファンにとって思い出深いレパートリーで構成されたセット・リスト、佐野のパフォーマンスをフィーチャーしたアレンジなど、特別 な趣向を凝らしたステージはあくまでも佐野元春を主役に据えたものであり、ザ・ホーボー・キング・バンドの演奏も佐野のバックアップに徹したものだった。

 そして、すべてが彼のために準備されたステージの上で佐野はバンドと共に誠意あふれるパフォーマンスを繰り広げた。のちに「イノセント」と名づけられることになる新曲を披露し、20周年のプロジェクトの数々を自身の口から発表する佐野のテンションはいつも以上に高く、やや暴走気味のミスも幾つかあったものの、ファンにとってはそれもうれしいハプニングだった。

佐野にとっても、ファンにとっても、それは間違いなく一生に一度の夜であり、佐野元春と彼らの20周年はこの夜から始まったのだ。

(吉原聖洋)



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