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05 | TOUR 2006「星の下 路の上」 | 2005-2006 |
Daisy Music初のマキシ・シングルとして、2005年12月7日にリリースされた『星の下 路の上』は、「ヒナギク月に照らされて」「裸の瞳」「星の下 路の上」の3トラックによる構成。若い世代をメンバーに迎え、佐野は精神の疾走と魂の咆哮を荒々しく謳い上げている。疾走と成熟を息苦しいほどに深めてきた佐野のシャウトは、「アンジェリーナ」のラストから遙かこの地平まで地続きで響いているようだ。『THE SUN』アルバムとツアーで、音楽面でも詩的世界でも豊かな語彙とともに成熟を顕した佐野は、ここでまた路上を直に指さして、次なる冒険の季節に入った。
TOUR 2006『星の下 路の上』は、結成10周年を迎えたTHE HOBO KING BANDとともに、1月13日から4月2日まで全国13のホールで展開された。「アンジェリーナ」で鮮烈な挨拶を交わし、「ぼくは大人になった」へと跳躍するオープニングからして、現在の佐野元春の立ち位置を力強く、明確に宣言するに相応しいものだった。時代を彩った佐野元春クラシックスが、2006年の解釈で鮮やかに煌いていく。アンサンブルの充実だけでなく、ソロを大胆にフィーチャー、HKBメンバーのポテンシャルの高さと多彩な音楽経験が前面に出されたステージでもあった。
初期衝動と成熟という、普通には同在しにくい対照的な性格を、溢れる友愛と愉楽のなかで緊密に結びつけたのが、このツアーの奥深い魅力といえるだろう。「ストレンジ・デイズ」「99ブルース」「インディビジュアリスト」「ワイルド・ハーツ」「ヤングブラッズ」が採り上げられたのは、『カフェ・ボヘミア』のリリース20周年を祝う意味も潜めてのことに違いない。時の経過は、佐野元春とオーディエンスを美しい約束のように繋いでいた。東京国際フォーラム ホールAで行われたファイナルのアンコールでは、レコーディング・メンバーの高桑圭、深沼元昭、小松シゲルを従えて「星の下 路の上」が披露されたが、ここにも熱い衝動と深い洞察の結合があった。
(青澤隆明)
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