Live at RainyDayBookstore&Cafe(Spoken Words) 日付/会場:2010/02/19 東京 西麻布 RainyDayBookstore&Cafe |
お名前:らくガキ 投稿日:Sat, May 31 2025 09:00:16 JST |
Live at RainyDayBookstore&Cafe (2010年4月記) 仕事を早めに切り上げ、地下鉄を表参道で 下車して渋谷方面へとしばらく歩く。 骨董通りへ折れると、 通りには高級ブティック店が建ち並ぶ。 通りから少しはずれた住宅地の一角に Rainy Day Bookstore&Cafeはありました。 まだまだ肌寒い中、開演を待つ観客が数人が 入り口付近に並んでいる。 そこを横目に何故か通り過ぎてしばらく歩き, また戻ってから列に並んだ。 地上のSwitchオフィスではたくさんの 関係者らしき人々でにぎわっている。 開場の時刻に扉が開き、担当者の方からの案内に 従って地下の会場へとつながる階段を ゆっくりと下りていきました。 今回会場となるこのRainy Day Bookstore&Cafe。 普段はCafeとして営業とのことで、 木製の資材を中心にしつらえた洒落た雰囲気で 居心地の良さそうな空間。 今回はライヴということで、テーブルは取り除かれて そこに小さな椅子が観客席として敷きつめられている。 ステージとされる場所の背面には壁一面に単行本や 雑誌が並んでいる。 ジャック・ケルアック、ウィリアム・バロウズ、 アレン・ギンズバーグ、ゲイリー・スナイダー。 芥川龍之介、太宰治、星新一、よしもとばなな、 筒井康隆、村上龍、村上春樹、等々...。 ワイルドターキーのソーダ割りを ごちそうになりながら、開演を静かに待つ。 ステージ上にはセンターに小さな木製のテーブル。 左手にはいくつかのキーボードが シンプルに組み合わされている。 右手奥には小振りなドラムスが主人の帰りを待つ セントバーナードのようにおとなしく横たわっている。 定刻の時間が少しだけ過ぎた頃、 キーボードの井上鑑さんとドラムスの山木秀夫さんが 定位置に着くと、佐野元春が地下に吹き込む風のように 颯爽と(駆け込むというわけではなく 本当にササッと風のように...)ステージ上に現れた。 長めの袖が手首の少し先まできている黒のシャツ。 リーディングの用紙からクリップをはずす指先の爪は, きれいに切りそろえられている。 粋な眼鏡の奥に潜む凶暴な情熱の光。 「じゃぁ、行こうか!」という合図と共に セントバーナードがむっくりと目をさまし ドラムスが転がり始める。 ”ポップチルドレン”からはじまった。 & #160;リーディングの中、後半のリリックを オリジナルレコードに近い、高いトーンで語る。 今夜だけの特別なグルーヴが徐々に形作られてゆく。 今回のライヴはWeb上で募られた 「詩のコンテスト」に応募した方の中から 50数名だけが参加の機会を得た。 ぼくは運良くこのイベント参加の抽選に当たることが出来た。 このイベントに参加してくる方々は詩を したためる人々で、何かぼくのような半端な勤め人が たまたまこうして僭越ながら参加できてしまったことに 少し後ろめたさも感じていた。 2003年の 「In Motionー増幅」から7年ぶりの スポークンワーズライヴは、以前の緊張感と しなやかさを踏襲しながらも、 この夜にしか醸し出されることのない 独特の磁場を感じることが出来た。 今回のバンドはドラムス・キーボードの2ピース。 そして佐野のスナップなどのボディパーカッション。 ベースがないからだろうか? とても浮遊感のある 音象が感じられる。 螺旋階段を上り下りするような、 方位磁石が定まらないような、 言葉とキーボードとドラムスの絡まりあいが サイケデリックな磁場を作り出している感じがした。 この夜、新たなリーデングが2曲なされた。 どちらも現在の空気の中に漂う咀嚼する以前の 硬質なクロスワードが佐野元春の体内から放たれた。 「ぼくが旅にでる理由」の中で佐野元春は ”時間がない、今 絶望する ゆえに 即 希求する”と, 世界中の誰にも出来ない強力な舵取りを しながらリーディングする。 深い森の中で仲間にはぐれて途方に暮れた老人のように 「植民地の夜は更けて」の中でグロテスクな センテンスが不吉に連なる。 喩えようのない磁場が会場を包み込み、 今、現在 確実に存在するが、 どこでもない空間に響き渡るサウンドは、 ここに集まった詩人達の魂を確実に 打ちのめした。 後半、このコンテストで選ばれた素敵な詩が 佐野元春によってリーディングされ命を 吹き込まれたかのようにいきいきと会場内を舞う。 ラストの「何が俺を狂わせるのか?」での ファンキーなサウンドにTangle Upされながら 言葉の木立の中をスピンをかけてさまよいまわり、 カットアウトの後、現実にかろうじて着地した。 街の詩人達の中に紛れ込んだ夜。 本当に幸運で稀な機会を得ることが出来ました。 こんなすばらしい機会を与えてくれた 関係者の方々に心より感謝致します。 そして、遅くなりましたが佐野元春デビュー30周年、 おめでとうございます。 キックオフイベントが済み、 このお祝いはまだはじまったばかりですね。 今こうしてある現在、景気のせいだけじゃない。 さえないことばかり目につき、しんどい日々が続こうが、 あなたと君の濡れたレインコートは俺が脱がしてやる。 |