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COUNT DOWN JAPAN 04/05

text:山田和弘


取材構成&テキスト: web Cb編集部 山田和弘
取材協力: M's factory, カミングスター

2004年を締めくくるロック・フェスティバル、COUNT DOWN JAPAN 04/05が12月29日から31日の3日間、幕張メッセにて開催され、最終日である31日に佐野元春がザ・ホーボーキングバンド(H.K.B.)とともに出演した。

 佐野元春にとって激動の1年であった2004年。ファンにとっては全国ツアー(「THE SUN TOUR '04-'05」)において年末の12月30日に大阪公演がセットされていただけでも驚きであるのに、その翌日、大晦日までイベントに出演するという。この1年を象徴するかのような精力的な活動だ。

 このロック・フェスティバルはロッキング・オン主催で年末の3日間(12月29日〜31日)行われ、元春は最終日である31日の19時過ぎの登場。前年のARABAKI ROCK FESTIVALでも元春の前に登場した「くるり」の後、そしてホーンセクションとはツアーを一緒に回ったこともあり、また佐野元春の大ファンで今年2月のイベントで共演した茂木欣一も所属している「東京スカパラダイスオーケストラ」の前にセットされた出演タイムテーブルというのも偶然とは思えない。

 前日の大阪公演も素晴らしいライブだったという情報も入ってきており、ステージではその勢いそのままのパフォーマンスが展開された。19時20分過ぎ、全国ツアーでライブスタート直前に流される曲と同じ曲がB.G.M.として会場に流され、オーディエンスは音楽に合わせて手拍子。ステージのスタートが近いことを予感させる。

 そして19時23分、元春とH.K.B.メンバーが登場。この日の衣装は「白い元春」だ。ツアーと同様、『Back to the street』からのスタート。ファーストアルバムのタイトルナンバーであるこの曲は白い衣装と相まって初心に帰る元春が感じられて非常に良い。唄いながら軽快に動き回る元春を見て、今日のステージも期待できそうだなと感じた。

 その後、曲は『99ブルース』から『インディビジュアリスト』へと続いた。ファンにはお馴染みのこの2曲の展開はステージパフォーマーとしての佐野元春の魅力を存分に見せ付ける素晴らしい流れだ。続いての『観覧車の夜』の長いイントロだけがツアーでの演奏と大きく異なった点か。ツアーでいうところの第1部と第2部のインターバルをこの長いイントロにて示したような格好だ。その予想通り、ここからは今年発売されたアルバム『THE SUN』からのナンバーが演奏された。

 『観覧車の夜』と次の『君の魂 大事な魂』では元春は座ってパフォーマンス。『君の魂 大事な魂』のイントロ部分でマイクを持つ手を真上に力強く突き上げる姿が印象的だった。おそらく元春やH.K.B.メンバーはこのロック・フェスティバルに出演する他の若きミュージシャン達の憧れであったり目標であったりするのであろう。

 2万人を超えるオーディエンスが集まったイベントの一番大きなステージにいながらも自然体で演奏するさまには「貫禄」「風格」といった言葉が浮かぶが、本人たちはあまり意識していない様子。ツアーで見せるようないつものプレイを続ける。それがまたカッコいい。

 その後ステージは『DIG』『国のための準備』へと続いた。アルバムと同じ曲順で演奏されるこの2曲は会場の雰囲気を盛り上げるには最高だ。2曲ともノリも良く、理屈なしに楽しめる。特にこのようないろいろなファンが集まるロック・フェスティバルなどにおいては非常に効果的だ。

 そしてステージは一転、『太陽』へ。ツアーで見せる例のセットはないものの、終盤は黄色い照明で太陽の光を表現。ツアーでも感じるがこの曲は非常に「強い」曲であり、演奏が終わった後に(本当は大きな拍手が会場を包んでいるのだが)一瞬の静寂にも似た雰囲気が感じられるところがなんとも言えず素晴らしい。この日のステージでもそれを感じることができた。

 『太陽』のあとは、いわばアンコールとも言えるパートへと移行した。元春はジャケットを脱ぎ、ギターをセットして、「みんな踊ってる? みんな笑ってる?」とひと言。そしてこの日、いや今年最後の曲、『アンジェリーナ』へ。最後、ドラムセットの前で後ろ向きに座り込みながらギターを弾く元春はやっぱり絵になる。ステージは大きな拍手の中幕を閉じた。

 ステージ時間は約50分。結果的には現在進行中の全国ツアーで見せるパフォーマンスの「濃縮版」的なセットリストとなった。曲数は少なかったものの一曲一曲のアレンジはツアーで見せるものとほぼ同じであり、今回のツアーのライブを既に経験したファンにとっても、まだ体験していないファンにとっても大変満足のいくステージであったと思う。

 今年の元春のマスメディアへの積極的な露出から「CMで伊勢谷君と共演している人」「今田耕司さんと一緒にテレビ番組に出ている人」といった認識で今回初めて佐野元春のライブを生で見たオーディエンスも多かったことだろう。限られた時間の中で硬軟織り交ぜた展開を見せた元春のステージを初めて体験した若いオーディエンスたちは今回のパフォーマンスをどう感じたであろうか。

 「どうもありがとう。良いお年を。」と言ってすっきりした笑顔でステージを後にした元春の背中からはこの大変な1年が自身納得のいく年となったことを感じさせた。

 佐野元春ファンとしても本当に大満足の1年だった。そのことは進行中のツアーで全国のファンの笑顔と向き合うことで元春はすでに十分理解してくれていると思うけれども。


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