取材・編集:今井 'KenG' 健史・森本真也
デザイン・撮影:コヤママサシ
編集協力:M's Factory
VISITORS 20周年記念モデルは、G-SHOCKのコンセプトを保ちながら、
佐野元春さんのイメージを反映した


今回、MWSストアに「VISITORS 20周年記念 G-SHOCK オリジナルモデル」が登場するわけですが、まずベースとなっているモデルはどういったものなのでしょうか?

小川(カシオ)●モデルとしては「The G」と呼ばれるシリーズのものです。「止まらない、狂わない、壊れない」ということで、ソーラーパワーと電波時計、それとG-SHOCKの耐衝撃構造を搭載しています。G-SHOCKが誕生したのが1983年で、最初の開発コンセプトが「トリプル10」というものでした。10気圧防水、10mの落下に耐えられ、10年の電池寿命を持つ時計を作りたいというのがスタートでした。その後、いろいろな付加機能が付いて、今のようなモデルに変わってきています。
金津(カシオ)●ただ、ベースのテーマは変わってないんです。G-SHOCKは「タフ」というのがテーマですので、根底に流れるスピリッツは変えないようにしています。


今回の「VISITORS 20周年記念 G-SHOCK オリジナルモデル」での、
特別なこだわりのようなものはありますか?

金津●G-SHOCKのコンセプトを保ちながら、佐野元春さんのイメージを反映したいということで、ELバックライトやバンド部分などにこだわりを持っていただくようにしました。
中野(MWSストア)●もう、これ以上ないというくらい、いろいろとカスタマイズできる部分を教えてもらいました。個人的に気に入っているところとして、裏蓋にシリアルナンバーが入ってます。あと、驚いたのは文字盤の「CASIO」のロゴを「MOTO」にしていただいたことですね。カラーに関しても、一見すると通常のモデルと同じに見えるかもしれませんが、すべてカスタマイズされた色になっていますし、プライスタグやケースもオリジナルのものになってます。


バックライトにVISITORSのイラストが浮かび上がるのが驚きますね。

小川●それもこのモデルのひとつの特徴ではあるんですね。液晶前面がブルーに光るモデルになっていますので、フィルムを挟んでオリジナルなものにできるんです。


G-SHOCKの登場が1983年ということで、『VISITORS』と同様に20年の歳月が流れたわけですが、G-SHOCK開発スタッフとして当時を振り返ってみると、1983〜1984年とはどういう年だったでしょう?

金津●まずブランドとして、20年も生きているブランドは数少ないと思うんです。ましてや時計というジャンルではほとんどないと思います。実は、G-SHOCKは発売当初、ほとんど売れなかったんです。こんな分厚い時計って世の中にはそうないですし、「この厚さっていったい何?」というのが一般的だと思うんですよ。でも、これがG-SHOCKなんですよね。そこを認知していただいた、ブランドとして理解していただいたということで今があると思うんです。すごく売れてブームになって、そのまま一過性で終わってしまうものもあるじゃないですか。でも、そこで終わらせないで今も頑張れているのは、底辺に持っている「タフ」であるとか「アメリカのイメージ」が変わらずにやってこられたからだと思うんです。
小川●G-SHOCKのモジュールって、本体の中で浮いているような状態になっているんです。点で支えてうまく衝撃を和らげる構造になっているんです。それを作り上げるまでには、数百という時計をダメにしてやっと誕生したんです。

VG-SHOCKもVISITORSも、
 '80年代中盤の革命的なプロダクツのひとつだった。


このG-SHOCKという時計について、佐野さんはどう思われますか?

佐野●G-SHOCK以前の時計というと、入学祝いとか何かの記念にとか、高級品という性格が強かったと思うんですけど、G-SHOCKの登場というのはもっと身近でカジュアルで、ガンガン使いこなすものという、時計に対するイメージを変えたのかなと思います。そういう意味では、'80年代のヒット商品であるだけでなく、腕時計というコンセプトを変えたエポックメイキングなプロダクツと言えるのではないかと思います。


佐野さんは1983年から1年間ニューヨークに住んで『VISITORS』を作り出したわけですが、今までお話を伺ってきたG-SHOCKに何か接点が見えたりしますか?

佐野●先ほど言ったとおりに、G-SHOCKが'80年代中盤に出た、時計というものの概念を変えたプロダクツという見方をすれば、僕の『VISITORS』もまた、長い間外に出てレコードを作り、それを持ち帰って販売するという前例のないスタイルの作品でした。あと、歌の内容にしても、それまでは歌謡曲といったものがヒットチャートの中心にありましたし、歌の内容が非常に狭かった。ところが、『VISITORS』は僕がニューヨークに行き、ニューヨークの街を1年間ドキュメントして、街のバイブレーションごと音楽にパックした。それを日本に持ち帰って、まるで逆輸入のようなかたちで日本でヒットした。これは一種の革命だったんですね。それまでの日本のポップ音楽の可能性をひとつ広げた。表現としても形態としても広げた、ある意味で'80年代中盤の革命的なプロダクツのひとつだったと思う。その点で共通するものがあるんじゃないかな。


ストリートでやっていくためにはタフでなければいけない時もあると思うんです。『VISITORS』でもそういったことを歌っていますね。
そのタフさというのは『VISITORS』にもG-SHOCKにも共通してあるのかなと思います。

佐野●G-SHOCKというのはタフということがコンセプトにあり、キズつけてもぶつけても大丈夫なのだからガンガン使ってくれ、というところが新しかったと思う。自分もニューヨークで暮らして分かったのは、それまでは音楽というのは生活を飾る装飾品のような、ちょうど壁に掛ける時計のようなものだと思っていたんだけど、ニューヨークの人たちは音楽を生活の道具にしている。あるアーティストが歌った歌の一節を、自分の哲学に置き換えて生きる勇気に変えるとか、音楽というものをきちんと有効な道具として使ってるんですね。『VISITORS』というのも、僕は自分の中でそういうテーマを持っていました。そうすると、時計を使う個人も音楽を聴いた個人も、その中で自分にとって大事なものは何か、ということを引き出してくれる。いったん自分のものにしてくれると非常に長く付きあってくれるんですね。つまり、流行のものではなくなって、自分に取ってかけがえの無いものになってくる。だから、G-SHOCKにはそういう感覚があるんじゃないでしょうか。その証拠に20年も多くのファンを引きつけているということができると思う。『VISITORS』もまたそうで、僕は20年も自分の作品が聴かれているということに対して非常に嬉しい思いでいますし、G-SHOCKもこのように20年間ファンを惹き付けているということを考えると、ある種の普遍性といったものは確実にあるんだろうなと言うことは感じますね。

G-SHOCKは、環境問題のような時代のムードや課題というもの取り入れた
 もの造りをしているからこそ、新旧のファンを引きつける魅力がある

佐野●あと、G-SHOCKにいろんなバリエーションがあることに、僕は驚いているんですけど。イルカクジラ会議のモデルとか、ホピ族をイメージしたモデルとか、僕の心を捉えるものもたくさんありますね。
小川●イルカやクジラを取り巻く環境ですとか、そういった会議をカシオとしても賛同してバックアップしていこうということで、バックグランドにあるコンセプトもそれまでのカシオに無かったモデルです。
佐野●環境というコンセプトをハードウェアにセットしたこと、それがイルカクジラ会議のバージョンで見ていて好きだなと思った理由なんですけど。ソーラーの技術など、企業として環境といったものをテーマに開発をしていくのは最近の流れだと思いますが、使う人の側からもそうした要望というのはあるんですか?
金津●ありますね。実際にこれ(The-G)はソーラーなんですけど、会社としては電池以外のパーツでも有害物質を無くす取り組みをしています。パッケージなども以前はプラスティックだったものを今は紙にして、塩ビをなるべく使わないように廃止していくとか。環境問題というのは商品に落し込むと、今までやっていたことが段々と否定されていくんですよね。そしてそこは変えていかないといけないものなんです。
佐野●それはひとつの傾向ですし、やはり環境というものを意識している企業、そこからデザインを伴って良いものが提案されると「あの企業クールだね、あの製品はクールだね」という価値観が、ユースの中で出てきていますよね。いち早く時計にソーラーをセットして、デザインの部分でもイルカクジラ会議をバックアップするようなデザインとか、こういう取り組みが僕は格好いいなと思いますね。これが、単にデザイン的でヘビー・デューティで、80年代と同じことでやってきていると、多分思い出の一品になってしまうんじゃないかと思う。しかし、ここまで新しいファンを惹き付けている、あるいは旧来のファンも新しいものが出ることを気にしていることを見るとすれば、時代のムードや課題というものをちゃんと製品の中に取り入れている、この努力は素晴らしいなと思います。


最後に、この商品を手にされるファンに向けてメッセージをお願いします。

小川●今回、記念モデルということで裏蓋にもシリアルナンバーが刻んであります。G-SHOCKのコンセプトであるタフな商品ですので、ガンガン使っていただきたいんですけども、その反面、記念モデルですので化粧箱を含めて気持ちを込めて作っていますので、大切にしていただければなと、そんな思いです。


もし、どこかが破損してしまったときのメンテナンスサポートは?

金津●それはサービスで保証していますので、大丈夫です。まぁ、壊れることは無いと思うんですけどね(笑)。
小川●我々のところに結構修理などで帰ってくるんですよ。ほとんどが電池交換なんですけど、いろんなお客様のG-SHOCKを受け取ると、ベルトの部分が擦れてしまっていたり、ロゴの部分も長年使っていて若干はげてきたりしているんですけど、それを今も大事に使っていただいて電池交換していただけるというのは、非常に有り難いなと思ってます。
佐野●特に女性向けにBaby Gというのもあるようですけど、スポーツ好きの女性などは、The-Gをこのまま着けるほうが格好良いと思う。男物のシャツを着るのが好きという女の子たちもいるからね。

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