12 月7日リリースの3トラックアルバム「星の下路の上」に収録される3曲のニューソングをイメージしたオリジナルのコーヒーブレンド。この製造にあたってご協力いただいたのが「珈琲屋めいぷる」のマスターである関口さん。2005 年10月に行われた、限定ライブ「THE LAZY DOG LIVE '05 」にて来場者にプレゼントされたデイジーブレンドコーヒーでも素晴らしいテイストのコーヒーを届けてくれた関口さんに、今回の3ブレンドに関するさまざまなエピソードをお伺いしました。


編集・撮影・制作:今井 'KenG' 健史・森本真也 
編集協力:M's Factory 

MWS●THE LAZY DOG LIVE '05で、お客さんにプレゼントされたコーヒー豆がとても好評でした。
大山●ライブに来てくれた人に何かをプレゼントをしようということになり、最初はステッカーとかいろいろアイデアが出たんですが、コーヒーはどうだろう? ということになったんですね。それで、インターネットで「めいぷる」さんを探し当てて、すぐに連絡をしたんです。Webサイトに「ホーボーキング」と「ハートランド」というブレンドが書いてあって、「もしかしたら佐野さんのファンかもしれない」と。
関口●最初、大山さんから電話をいただいたときに、著作権か何かのことで「これは絶対怒られるんだ」と思ったんですよ(笑)。
MWS●今回、新作のリリースに合わせて、それぞれの曲のタイトルをイメージしながらブレンドされたそうですが。
関口●はい。最初に3種類作ろうというお話をいただいて、それぞれ味が違うほうが良いだろうと思ったんです。パナマとエルサルバドルを使ったチョコレートのような風味の「星の下 路の上」。ザンビアとブラジルで一番深煎りかつスパイシーな風味の「ヒナギク月に照らされて」。コスタリカとニカラグアを使ってフルーツみたいにさわやかな「裸の瞳」です。コーヒーは、浅煎りから深煎りにかけて味が変化していきますので、どうせ作るなら全然違った味のほうが飲むのも面白いだろうと。あとは、お話ししながら曲を聴かせていただいて、そのときのイメージでそれぞれブレンドを当てはめてみました。
MWS●曲のイメージに合う豆が、今回のブレンドに活かされているんですね。
関口●そうですね。曲調から味の感じを決めていきました。「ヒナギク」はサウンドもヘビーなので深煎りで。「裸の瞳」は歌詞に「朝」という言葉などが入っていて、モーニングコーヒーとして大きめのマグカップでゴクゴク飲めるように、浅煎りのさっぱりとしたフルーツの様なものを。そして「星の上」がその中間くらいのサウンドだったので、これがまたピタっとはまりました。
MWS●新作の3トラックEPは、3曲とも非常にバラエティに富んでますからね。
関口●その辺がうまく当てはまったというのも、また面白い話しでして。
大山●佐野さんに、この3種類のブレンドをどの曲に当てはめるかを選んでもらったんです。そしたら、関口さんが考えられていたものとぴったり一致したんですよ。
関口●まったくその通りだったので、ちょっと鳥肌が立ちました。シンクロしていたので。すごく嬉しかったです。(ここで試飲の準備が完了)

関口●では、ちょっと淹れてみますね。うちでは、フレンチプレスでコーヒーを淹れています。粉を入れてお湯を注いで、4分間たったら出来上がりです。フレンチプレスでコーヒーを淹れているところは、全国でもほとんどないんじゃないかな。普通はネルドリップやペーパードリップで淹れているのだと思うんですけど、ペーパーやネルだと豆の持っているオイル分を吸い取ってしまいます。実はここがポイントで、コーヒーのオイル分に旨味が凝縮されているんですよ。紙やネルなどではその旨味を吸い取ってしまいますが、これは金属のフィルターなのでオイル分も全部通します。コーヒーの持っている味が全部カップに入るんです。
ただ、ネルやペーパーで漉すと非常にきれいな透明感のあるコーヒーになるんですけど、フレンチプレスはオイルも通すかわりに微粉も通しちゃうんです。ですから、ちょっとコーヒーが濁った感じでオイルも浮いていて、見た目は良くないんですね。でも味で選ぶとこちらのほうが美味しいので使っています。
MWS●フレンチプレスって紅茶を淹れるものですよね?
関口●もともとはコーヒー用なんですよ。ただ、日本に入ってきた時に「紅茶も淹れられますよ」と紹介されたので、それで紅茶用として普及したのではないかな。ただ徐々に変わりつつあって、今では無印良品でも売り出してますし、かなりコーヒーを淹れる器具として普及してきましたね。うちも以前はペーパーを使っていたんですが、米国のスペシャルティ・コーヒー協会に勉強に行ったら、これ(フレンチプレス)が当たり前のように使われてるんですよ。「ネルやペーパーは使わないの?」と訊いたら、「あれは普通のコーヒー豆を淹れるためのものだ。美味しいコーヒー豆ならコレで入れるんだ」と言われて、目から鱗が落ちました。それで米国から帰ってきて、ガラッとやり方を変えたんです。だから僕の中では「VISITORS」体験でした(笑)。
MWS●米国にはどれくらい行かれていたんですか?
関口●向こうのコンファレンスに参加したので1週間くらいです。最初に行ったのが2001年で、それからは毎年参加しています。向こうに行くと世界各国の生産者の方とも直接話しができるんですね。良い豆というのは「スペシャルティコーヒー」という言い方をしています。農園の方と仲良くなることで、スペシャルティコーヒーを直接取り寄せられるようになるんです。ただ、うちの様な小さな店では使うコーヒー豆の量も限られていますので、全国にいるコーヒー屋の仲間たちと協力し合いながら活動しています。
MWS●コーヒーの淹れ方が変わったことで、お客さんの反応はどうでしたか?
関口●やっぱり「前のほうが良かったね」という方もいらっしゃいましたが、慣れてくると「これ、結構いけるじゃないか」という方も増えてきました。
MWS●まさに「VISITORS」ですね(笑)。
関口●本当はお客さんあってのお店なんですが、自分が変わっちゃうとなかなかお客さんが付いてくるのが難しい部分も出てくるんですけどね。でもやっぱり、良いと思った方向にどんどん進んでいかないと。それに付いてきてくれる方は本当にありがたいです。

MWS●まずは、「星の下 路の上」をいただいていますが、確かにチョコレートのような香りがありますね。
関口●後味にそれを感じてもらえると、作った甲斐がありますね。このフレーバーは、お菓子やケーキと合わせていただくと美味しく飲める感じです。だから、クリスマスケーキとかと一緒に味わっていただくには「星の下 路の上」が良いと思います。

MWS●「裸の瞳」は、軽くて少し酸味がありさわやかな味ですね。
関口●ちょっとフルーツのような味わいがあります。かなりさっぱりしていて、朝飲んでいただくのに良いですね。モーニングコーヒーとしてマグカップでたっぷり飲むには、このくらいの方が飲みやすいんじゃないかと思います。


MWS●こちらが一番深煎りの「ヒナギク月に照らされて」ですね。
関口●このまま飲んでも美味しいですが、深煎りのコーヒーってミルクと相性が良いんですよ。カプチーノを作ったりするときは、コーヒーのテイストがミルクに負けないので深煎りのものを使うんです。普通に飲んでいただくのも良いですし、カフェオレにしていただくのも良し。最近ではご家庭でエスプレッソマシンなどを持っておられる方もいますから、それで淹れてもらっても面白いですね。3つそれぞれ個性があって、こういう場面ではこれを飲むというのをイメージしてもらうと、美味しく飲んでいただけると思います。

MWS●少し冷めてきたら、また味が変わってきました。
関口●この変化が面白いんです。冷めてきた時に味が悪くなっちゃうコーヒーですと、飲んでてイヤになりますよね。冷めてもすっきりしているのが良いコーヒーだと思います。アフターテイストがしっかりと余韻が残って、冷めても変な味が出てこない。
MWS●「星の下 路の上」のチョコレートテイストは、どの豆に由来しているんですか?
関口●今回だとパナマですが、パナマをメインにして他の豆で味を整えています。「裸の瞳」はコスタリカ、ニカラグアとも浅煎りで美味しい風味が出るコーヒーなので、それを活かしてフルーツの様な感じを出すように作ってみました。「ヒナギク月に照らされて」はザンビアがスパイシーです。スパイシーというと、アジアンテイストの辛いイメージを思い浮かべますけど、このスパイスはカルダモンやシナモン、クローブなどの香ばしさをイメージしていただけると、分かっていただけると思います。

from seed to cup

関口●今回のパッケージラベルにも書いてもらったのが「from seed to cup」。これは、コーヒーの種から目の前にあるカップまで、全部繋がっていないと美味しいコーヒーにはならないという、スペシャルティコーヒーの基本理念なんです。具体的に言いますと、産地でコーヒーの花が咲いて青い実がなって、熟して赤い実になる。熟した赤い実は美味しいですが、青い実は悪い味です。それをまとめて収穫すると、やはり味が悪いんですよ。それなので、スペシャルティコーヒーは産地で赤い実だけを選別するんです。でもそれは農園としっかりとした信頼関係を作って、農園の方に「こういうコーヒーを作ってくれ」とちゃんとコミュニケーションを取らないとやってもらえないんですよ。それから、必ず、そこで働いている人たちの生活が成り立つ値段で買ってあげないと、まともなものは作ってもらえないんです。だから人間関係、繋がりが大切です。そうやって入手した種を、最終的にカップの中に注ぐまで、すべてが一貫して繋がっていないとスペシャルティコーヒーにはならないというのが「from seed to cup」です。
どうも僕は、これも佐野さんのやってる仕事と似てるんじゃないかと思うんですよね。ファンの立場から見ると、佐野さんは作品のあらゆるところに関わっているように見えるんです。何となく分かりますか?
MWS●分かります。つい先日、マスタリング対談をしてきた時にも、佐野さんがしきりに言われていたのは、「レコーディングには人が介在している。人と人との信頼関係やスタッフの才能というところでサウンドはいくらでも変わることを、みんなにも知ってもらいたい」と言っていました。
関口●種の部分は、佐野さんの頭にある音楽のアイデアですよね。そしてCDなどのメディアはカップの中のコーヒー。この「from seed to cup」というのは、佐野さんのやっている音楽と似ているなぁと思って、それで「ちょっと載せてもらえませんか?」という話をして、今回のパッケージラベルにも印刷してもらいました。

MWS●今日はありがとうございました。ところでお店の名前ですが、「カフェ・ボヘミア」にはしなかったんですね(笑)。
関口●(笑)開店したとき、友達にも「店の名前はカフェ・ボヘミアだろ?」って言われましたよ。
MWS●もし、その名前をつけていたら、もっと早くに話題になっていたと思います(笑)

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12月9日(金)発売開始!
7,350円 (本体7,000円) SOLD OUT, Thank you!