1991年2月14日〜16日、幕張メッセで開催されたApple Macintoshの祭典である第一回「MAC WORLD Expo/Tokyo」。この最終日である16日にコンヴェンション・ホールにて「佐野元春マルチメディア・アート・エンターテイメント・スペシャル・プログラム」と題されたイベントが行なわれた。
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第一回マックワールド・エキスポにて、当時のアップル・ジャパン社長 代表 武内氏と |
当時のアップルジャパン社長である武内氏がホスト役を務め、佐野元春のマルチメディア・アートの内容を佐野自身の試作デモンストレーションで進めてゆくという約45分間の構成。佐野は“詩”が持ち得る新しい力や可能性を「エレクトリック・ポエトリーDOVANNA」と題し発表した。
この作品を発表した91年といえば、まだまだインターネットが一般的にはなかった時代。パーソナル・コンピューターを使ったアート表現の可能性に早くから着目していた佐野は、音楽と映像、ポエトリーを融合、体験者が作品をインタラクティブに扱うことができる仕組みを提示。驚くべきことにすでにこのとき、ネットを意識したノンリニアなアート表現を実現していた。
再生するためのハードウェア環境は当時の最上位機種であるMacintosh ll fxと、外部装置としてレーザーディスク。オーサリングには当時リリースされたばかりの動画アプリケーション「ディレクター」を使っての実験的なマルチ・メディア作品だった。
佐野のメディア・アート表現へ向けたチャレンジは、'86年発表のカセットブック「エレクトリック・ガーデン」を起点として、このインタラクティブ・アート作品「ドバンナ」、そして今日のインターネット展開へとつながってきている。