09 | 最後のワンナイト・スタンド「Land HO!」
1993-1994



 1980年に活動を開始し、佐野元春の音楽の屋台骨を支え続けたザ・ハートランドの解散が発表されたのが、1994年4月25日。そして文字通り彼らがその活動にピリオドを打ったのが、同年の9月15日に横浜スタジアムで行なわれたライヴ「Land Ho!」だった。


Photo: 岩岡吾郎

 当日は朝から雨模様で本番が思いやられたが、幸運なことにライヴがスタートする頃には雨も上がり、天候は野外ライヴにはベストの状態。これがザ・ハートランドのラスト・ライヴとあって、全国から駆けつけた人達で埋め尽くされたスタジアムは、最初から最後までテンション上がりっぱなし。ステージ上もグラウンドも、熱気のこもった一夜となった。

 この日、ステージに上がったのは佐野以下、古田たかし(dr)、小野田清文(b)、長田進(g)、西本明(key)、阿部吉剛(key)、里村美和(per)の6名。それにTokyo BeーBopのダディ柴田(Sax)、石垣三十郎(Trp)、ボーン助谷(Trb)、コーラスのMelodie Sexton、Paula Johnsonの面々。

 さらにこの日の観客を歓喜させたのは、かつてザ・ハートランドのギタリストだった伊藤銀次と横内タケがゲストとして参加したこと。いずれもザ・ハートランドのメンバーとしてファンの脳裏に焼き付いている人びと。彼らの姿を最後のステージで見られたことは思い出深く、また貴重だった。

 3時間半に及んだそのライヴは、後日、WOWOWの特別番組「栄光のマイルストーン」として放映され、さらに『They called the band 'HEART LAND'』という2枚組のビデオとなって残された。ビデオにはバック・ステージでの彼らの姿も記録され、“最後の日”のドキュメントとなっている。

 ライヴ・タイトルの「Land Ho!」は、日本語に訳すなら「陸が見えたぞーっ!」といったところか。陸地にたどり着き、14年間の航海を終えた男たち。その表情には湿っぽさは微塵もなく、ひとつの仕事をやり遂げたすがすがしさが漂っていた。

●参考資料
コンサート・パンフレットに掲載されたコメント「ハートランドからの手紙#80


(角野恵津子)



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