河野哲郎の絵には不思議な魅力がある。その魅力は「アメコミ調」などという乱暴なひと言で表現できるものではなく、さまざまな文化の多様なエッセンスが絶妙の配合で混じり合った彼の絵には唯一無二の個性的な輝きがある。彼の作品の背後には見る者の興味をそそるストーリーがあり、その世界にはいつも魅惑的な音楽が流れている。久住昌之との共著『ワン ファイン デイ』(ブルース インターアクションズ)のページをめくれば、僕らはここではないどこかへと旅立つことができる。けれども、それは現実とは無縁の夢や幻の世界ではなく、僕らがいま生きているこの世界のどこかに実在するかもしれない場所であり、そこには僕らとよく似た人たちが素敵な音楽と共に生きている。ちょっと羨ましい。そんなふうに河野哲郎の絵は僕らを心地よく刺激してくれる。 |
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