01 | Jan.24.2001
Caravan
午後1時、都内の某リハーサル・スタジオに到着。顔見知りのスタッフに挨拶し、久しぶりの現場の空気をタバコの煙と一緒に深く吸い込む。佐野元春率いるザ・ホーボー・キング・キャラヴァンの旅はここから始まる。そして、その旅から新しい音楽が生まれる。

やがて佐野元春がスタジオに到着し、ザ・ホーボー・キング・バンドのメンバーも次々にやって来る。KYON、井上富雄、佐橋佳幸、そして古田たかしがスタジオに到着する。古田を見つけた佐野は「やあ」と声をかけながら歩み寄り、しっかりと握手。

佐野と古田とのセッションは1994年9月の“ランド・ホー”以来、6年半ぶりのことになる。オールド・ファンの感覚としては「Takashi is back !」。新生H.K.B.の一員としての古田がどんなプレイを聴かせてくれるのか。彼の加入によってH.K.B.のバンド・サウンドがどんなふうに変わっていくのか。誰もがそれを楽しみにしている。

リハーサルの冒頭で譜面が配られたとき、古田が「えっ。譜面があるの?」と驚いた声を出す。ザ・ハートランド時代のセッションでは譜面は使われていなかったからだ。「最初だけだよ」と言いながら苦笑する佐野。

休憩中の会話
佐橋「ハートランドではまったく使ってなかったんですか?」
古田「誰かが譜面を出したりしたら“そんなものは使っちゃいけない”って佐野くんに叱られたもんだよ」
しかし、H.K.B.が使っている譜面も綿密なものではない。セッションを繰り返しながらバンドはアレンジを練り上げていく。それはハートランド時代と変わらない。ただし、その作業は大幅にスピード・アップしている。
休憩中の会話
古田「ホーボー・キング・バンドのセッションって、いつもこんなに速く進むの?」
佐橋「ええ。もっと速いこともあるけど」
古田「ハートランド時代の500倍は速いよ」
今回のレコーディング・セッションでは佐野は敢えてトラディショナルな方法を選択したようだ。1950年代以来のロックンロール・バンドのスタイル。これはもちろんザ・ハートランドのスタイルでもある。佐野が「こんな曲なんだ」と呟きながらギターやピアノの弾き語りで新曲を披露し、その弾き語りにミュージシャンたちが徐々に加わっていく。効率至上主義的なシステムがマーケットを占拠している現在、こういったスタイルを選択すること自体がリスキーな冒険かもしれない。
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