03 | Feb.21.2001

Blow Away


 今日はサクソフォン・プレイヤーの山本拓夫がセッションに加わる。佐橋と山本は高校時代からの音楽仲間だ。佐橋によれば、出会った頃の山本は「ジャコ・パストリアスばりのベーシストだった」という。そして今はさまざまな木金管楽器を縦横無尽にプレイする「吹奏楽界のKYON」(©棟梁)だ。

 山本を迎えての「NGA」のセッション。楽曲の輪郭と構成は前日以上に鮮明になってきた。ソプラノ・サックス、フルート、バス・クラリネットなどを持ち替えながらプレイする山本の参加もあって、セッションはより熱を帯びる。

 その後、ミュージシャンたちは「Free」のハーフテンポ・ヴァージョンに挑戦する。アップテンポ・ヴァージョンでレコーディングしたばかりの新曲「Free」を再構成する作業は容易ではない。だが佐野はどうしてもこのハーフテンポ・ヴァージョンを試してみたいようだ。

 休憩中、佐野がエレクトリック・ピアノを弾きながら歌っている。聴いたことのない曲だ。音と言葉を探しながら呟くように歌う佐野。サブ・ルームで談笑していたH.K.B.のメンバーも「棟梁、また新曲を作ってるんじゃないの?」と驚く。

 数分後、ローディーの小島が「井上さん、どうぞ」とサブ・ルームに声をかけ、井上がスタジオに招かれて、彼のベースが佐野の弾き語りに加わる。H.K.B.はこれを「個人面談」と呼んでいる。メンバーは病院で診察を待っている患者になったような気分。あるいは進路相談の順番を待つ中学生か。また数分後、今度は古田が呼ばれる。「古田さん、どうぞ」。スタジオのドアを開けて「お願いします」と挨拶する古田。サブ・ルームが笑いの渦に包まれる。

 その後、山本も含めた全員が参加してのセッションで新曲が演奏される。聴く者の心をやさしく癒すようなロマンティックなバラッド。佐野がミュージシャンたちに「聴いている人を眠らせるような演奏」を指示する。この新曲は「Beach」(仮題)と名づけられた。

 セッションが終わった後、H.K.B.の4人と山本はリチャード・トンプソンのギグを観るために渋谷のライヴハウスへと向かった。



Moto Said...



 


Copyright 2001 M's Factory Music Publishers, Inc. Sony Music Entertainment, Inc.