今日は僕の誕生日だった。いつもの朝に、僕は起きた。
世界中からメールが届いていた。それは新しい経験だった。

僕は自分の好きな音楽を創ってきただけ。そのかけらを多くの
人達が拾ってくれた。そして僕を友達のように扱ってくれた。

僕の計算機に流れついてきた、君の言葉。
が、優しくも、何度も、僕の心ににじむ。「誕生日、おめでとう。」

僕は濡れた。

僕の音楽に触れてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を旅の友にしてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽に清と濁を見いだしてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を枕の下敷きにしてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽をいつもそばに置いてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を友達に紹介してくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を時間と一緒に連れてきてくれたすべての人達に感謝します。

僕は濡れた。

僕の音楽にリボンをかけてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽と哀しみを分けてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽と酔っ払ってくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽と喜びを抱いてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽と笑ってくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を必要としてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を子供達に聞かせてくれたすべての人達に感謝します。

僕は濡れた。

僕の音楽を宝石と引き替えてしまったすべての人達に感謝します。
僕の音楽にときめいてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を記憶の海に燃やしてしまったすべての人達に感謝します。
僕の音楽を寺にしてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を、光の下に導いてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を便箋にしてくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を闇から引き出してくれたすべての人達に感謝します。
僕の音楽を導火線にしてくれたすべての人達に感謝します。
そして、僕の音楽を導火線にしてくれたすべての人達に謝罪します。

たくさんの誕生日メッセージをどうもありがとう。
僕のハードディスクはパンクです。

そして、このウエブ・ページを運営するMIPSスタッフに感謝を。
僕と世界とを新たな方法で結んでくれた勇敢な人々です。

これからもいい音楽をたくさん書いていきます。またみなさんとは
CDで、ライブで、そしてこのウエブ・ページで会えるのを楽しみに
しています。

そのときまで、元気で。

佐野元春
96.03.13