11 | 元春レイディオ・ショー
1980 -1981



 1981年4月から1987年3月の最終回を迎えるまでの6年間、毎週月曜日、NHK-FMをベースにオンエアされ、全国のユースに熱狂的な支持を得た伝説の音楽番組。それが『元春レイディオ・ショー』だ。

「Less talk, More music」。佐野のトーク・スタイルと選曲構成は、既存の音楽番組にはなかった独特の高揚感を生みだし、60分間のプログラムがあたかもひとつの音楽作品として完結しているかのようだった。

 欧米のロック・ヒストリーを基盤とした体系的な選曲、佐野の何気ないトークの中に滲むスマートな視点やユーモア、ヒューマンな価値感が、番組の人気を支える大きな理由だった。

「1,000の言葉より3分間のロックンロール」と語る佐野のDJスタイルが手本としたのは、彼が十代の頃影響を受けたアメリカ人DJ、ジム・ピューター、そして日本の糸井五郎であった。「ロック・レコードをできるだけカッコよく聴かせる」ために、選曲から資料調べ、そして原稿書きからトークまでをすべて自らの手で行なった。

 1983年5月、ニューヨークに単身渡米した佐野は、『元春レイディオ・ショー・イン・ニューヨーク』として番組を続行。以降1年間、米国事情を音楽とともにリアルタイムに伝えるジャーナリスティックな内容が話題を呼んだ。

 1987年3月、番組の終了が告知されるや否や、局にはリスナー・ファンからの嘆願の声が殺到、番組の続行を訴える署名運動が全国的に起こるなど前代未聞の事態となった。

 時を経て1999年現在、佐野はインターネットを通じて音楽プログラムを発信し、DJとしての復活を宣言。『レイディオeTHIS』とタイトルされたその番組は、まさに『元春レイディオ・ショー』を彷彿とさせるスタイルをともなってファンの元に届けられた。

 時を経ても変わらないそのDJスタイルに、かつてのリスナーファンはこぞって歓迎のメッセージを送り、同時に、継続してゆくことの強さを示すゆるぎない佐野の姿勢に私たちはただ感動するのだ。

(高野ヒロシ)



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