13 | 封印されたフィルム『ノー・ダメージ』
1982 -1983



 佐野元春はこれまでに数多くのヴィデオ作品を発表しているが、1983年、単身でニューヨークへ旅立つ前にリリースされたコンピレーション・アルバム『NO DAMAGE』とほぼ同時に劇場公開された同タイトルのフィルムだけは、これまで一度も市販されたことがない。

 フィルムはコンサートの模様に佐野元春のオフ・ショットが挿入されたドキュメント・タッチの作品で、特にジョン・レノンとオノ・ヨーコが反戦活動の一環として行なったパフォーマンスである“ベッド・イン”を模したシーンが話題となり、ジョン役を務めた佐野元春とともにベッドに横たわっているヨーコはあまりにも本物に似ているため、ヨーコ本人ではないかとまで噂された。

 この一件については佐野元春本人もコメントを控えているため、いまだにオノ・ヨーコ自身だとする説もある。また、フィルムの最後に佐野元春が“ジョージさん!”と叫ぶシーンがあるが、この“ジョージ”はジョージ・ハリスンのことではなく、ロック・フィルムの第一人者として知られる井出情児のことである。

(岩本晃市郎)



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