1990年4月から1991年9月までの1年半、東京FMをベースに全国放送された佐野元春による構成・選曲・DJのラジオ・プログラム。独特の切り口を持った文化コラムと良質なロック音楽で綴った25分間。それが「テイスティ・ミュージック・タイム」である。
毎週月曜日から木曜日の深夜11時30分からの放送。番組のオープニングは「今夜もこのクレイジーな都市に目を覚ましているみなさんに届けます」という佐野の一言から始まった。
佐野が80年代に手がけた「元春レイディオショー」との大きな違いは、「テイスティ・ミュージック・タイム」が、より大人のリスナーに向けられていた点だ。事実、佐野自身もこの番組を「『元春レイディオショー』を聞いて育った世代が次に聞く番組」として位置づけていた。
番組では毎回興味深いコラムが用意され、その内容は、環境の話題から心理学、ハワイ文化からアメリカン・コミックまで幅広いジャンルにわたって展開された。1990年8月にアルバム『Time Out!』のレコーディングの際には、渡英先のロンドンから「テイスティ・ミュージック・タイム・イン・ロンドン」として特別番組を放送。レコーディングの近況報告を中心に、自身によるロンドン事情のレポートがリスナー・ファンを大いに喜ばせた。
1991年に入ってから、これまで取り上げたテーマやエアプレイ・リストを掲載した佐野元春責任編集による小冊子「テイスティ・ミュージック・タイムス」を編集・発行。1,000部のみの抽選だっただけに多くの申し込みが殺到した。
「ラジオ・メディアで伝えたいこと、それは『LOVE』」と語る佐野。現在、デビュー20周年を記念したサイト「eTHIS」において、インターネットを使った実験的な番組配信にチャレンジしている。