02 | アルバム未収録曲―─『Moto Singles』
1989-1990



 レコード及びCDリリースには二つのパターンがある。シングル・ヒットした楽曲をアルバムにまとめるものと、アルバム・リリースしたものからシングル・カットしていくものだ。そして、そのどちらの場合にしてもアルバムにはアルバムのコンセプトがあり、シングルではリリースされたもののアルバムには収録されないままになってしまう楽曲もある。

 特に、シングルのタイトル曲よりも、アナログ盤の場合にはB面曲、CDシングルの場合には同録曲がアルバム未収録になってしまうケースが多い。けれども、そういった楽曲の中に隠れた名曲が意外にもたくさんあるのだ。 
MotoSingles
 1990年5月にリリースされた『Moto Singles 1980-1989』は、デビュー10周年を記念して企画されたアルバムで、佐野元春が1980年にデビューしてから1989年までに発表したシングルを2枚組のCDにまとめたアンソロジーだ。その中には、既発のオリジナル・アルバムには収録されなかった楽曲が『Moto Singles』に収録された全34曲中9曲含まれている。

 タイトル曲として発売されてアルバム未収録だったものは、「彼女はデリケート」「リアルな現実 本気の現実」「警告どおり 計画どおり」の3曲。そして、他の6曲はシングルの同録曲になる。「ひとりぼっちの反乱」はもともと片岡鶴太郎に提供された曲で、その時のタイルトは「Looking For A Fight」だった。その後、セルフ・カヴァーで「シーズン・イン・ザ・サン(夏草の誘い)」のB面に収録されていた。

「シャドウ・オブ・ザ・ストリート」は、「ワイルド・ハーツ(冒険者たち)」のB面曲。「風の中の友達」は、前述のシングル・タイトル曲でありながらアルバム未収録だった「警告どおり 計画どおり」のカップリング曲。「君が訪れる日」は「約束の橋」、「愛することってむずかしい」は「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」、「水の中のグラジオラス」は「シティチャイルド」のそれぞれカップリング曲だった。 

 2枚組CDセットとしてまとめられた、このシングル集がリリースされたことによって、'80年代に佐野元春がリリースしたすべての曲がアルバムとしてまとめられたことになった。ポップ・ミュージシャンとしてシングル曲を大切にする佐野元春らしい優れた楽曲に埋めつくされた内容は、ボリューム的にも、また佐野元春というアーティストの'80年代の活動を俯瞰(ふかん)できる点においても貴重な作品であると言えるだろう。

(池田聡子)



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