12 | 第三期マガジン「THIS」
1993-1994



 1994年、7年ぶりに雑誌「THIS」が街に還ってきた。


 THIS,Vol1
 

 佐野による新創刊メッセージに「この間、どのような事態が私達を失望させたのか。またどのような事態が私達を勇気づけたのか。検証を踏まえつつ、ここに『THIS』は前進します」とある通り、「BEAT」「COOL」「BOHEMIANISM」「INDIVIDUALISM」という第2期「THIS」で提案したライフスタイルを'90年代において再提出するという試みが第3期の「THIS」であった。

 が、2期ではアップ・トゥ・デイトなポップ・アイテムとしても機能させようと提出されたそれらの概念が、第3期の「THIS」では読み手の前に『ザ・サークル』発表後の空白期に佐野本人が、自らの活動の原点をもう一度、再訪する目的としてスタートしたことが特筆される点だ。

 故に新創刊号ではアメリカはコロラド州ボルダーで行なわれたアレン・ギンズバーグを賛えるイベントを特集し、当のギンズバーグをはじめとしたビートの流れを汲む詩人にインタヴューを試みている。いわば“ルーツ巡礼”とも言うべき取材はニューヨーク、ジャック・ケルアックの墓、サンフランシスコと続いていく。


THIS vol.2より─ J.ケルアックを墓参するMOTO (Photo: Fujishiro Meisa)

 それらから佐野が得たもの、感じたことは1996年発表の『フルーツ』に見事に結実した。それは佐野のエディター期の区切りでもあり、「カフェ・ボヘミア・ミーティング」への突入を機に休刊した第2期と同様に、『フルーツ・ツアー』をスタートさせ、ミュージシャン佐野元春に戻ったことから、第3期の「THIS」もひとつの句読点を打つことになる。

(山崎二郎)



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