13 | 長門芳郎著「魔法のビート」
1995-1996



 本書(メディアフロント/1,500円)は佐野のファンクラブ会報誌『エムズファクトリー・クラブ』に連載された、長門芳郎氏によるコラム「Who's Who」を中心に編まれた音楽評論集である。

 


 長門氏はシュガーベイブのマネージメントや伝説のレコードショップ「パイドパイパー・ハウス」の店主として知られていた人物だが、現在は「ビリーブ・イン・マジック」を主宰し、名盤のリイシューからシンガーソングライターの新作プロデュース、コンサート企画、昔なじみの良盤通販などの業務の上、執筆までこなす七面六臂の活躍を繰り広げている。

 「ビリーブ〜」の名前をつけるほど、ポップ・ミュージックへの愛情を抱く御仁による著作だから、面白くないわけがない。造詣の深さが伝わる文章で、バディ・ホリーからジョン・セバスチャンまで40組のアーティストを解説。コンパクトで情報性をそなえた「ロック人名録」としても利用できるはずだ。

 書籍化にあたっては佐野との対談が掲載され、読み物としてのボリュームもある。オールディーズに傾倒した時代から「パイドパイパー・ハウス」の思い出、そして数々の忘れることのできないミュージシャンたち……。そうした談義からは、佐野の音楽遍歴も重ね合わせながら読み進めることができるだろう。

 決して派手なものではないが、長門氏の地道な仕事が顕著に反映された本である。佐野ファンならば、良質な音楽ガイドとして常に携えたい気持ちになるだろう。(入手希望の方は、メディアフロント/03-3373-6521まで)

 

(増渕俊之)



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