03 | TV特番「2000年のイノセント」
1999-2000



 2000年の正月、相も変わらずくだらない番組が続く中、とても興味深いプログラムが放送された。佐野元春がホストとなり(これだけでも珍しい)、メジャー・リーガーの野茂英雄(当時デトロイト・タイガース)、吉井理人投手(当時コロラド・ロッキース)を迎えてのトーク番組が実現したのだ。

 
朝日放送新春TV特番「2000年のイノセント」より 撮影: ABC放送スポーツ局

 しかも、料亭にて収録され、3人とも袴姿というこれまた異例の登場。もともと、野茂、吉井両投手が近鉄バファローズに在籍していた時代からの佐野のファンだったということから始まった交流は、2人がアメリカに渡った後も綿々と続けられていたのだ。
 
 ベースボール・プレイヤーになる前はエレクトリック・ギターを奏で、バンドを組んでいたという吉井投手の佐野を見る視点は、普段は憧れられる立場からすっかり逆転して「ミュージシャン」としてのリスペクトに満ちているのがおもしろい。
 
 番組内で佐野モデルのギターが2人に贈呈され、ビートルズの「ブラックバード」が爪弾かれるシーンが特に印象に残った。1968年に書かれたこのナンバーは、当時のアメリカの黒人解放運動へのエール。黒い鳥が真夜中に解き放たれて大空を自由に飛んでいく。それは「鎖国」状態の日本野球界から自らのリスクを顧ず、単身合衆国に渡っていった2人の姿に重ね合わせられると言ったら穿った見方だろうか? 
 
 今シーズン、負け越してしまった両投手。「もう歳だよ」とこれまたこれまでの賞賛から一転して叩き始めている日本のプレスをあざ笑うようなピッチングを来年は披露し、この番組の続編がぜひ見たいものだ。

(山崎二郎)



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