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06 | 『VISITORS 20th Anniversary Edition』 | 2003-2004 |
オリジナルがリリースされた1984年からおよそ20年前、アーティスト自身のキャリアおよびロック・カルチャーに革新を起こしたアルバムがあった。ボブ・ディランの『Bringing It All Back Home』(65年)とビートルズの『REVOLVER』(66年)だ。その2枚と『VISITORS』は、時代を進めたという意味において同胞だといえる。『VISITORS』は、日本ポップ・シーンの時計の針を早回しし、その後のジャパニーズ・ヒップホップ・シーンを用意した作品でもある。
アルバム冒頭の「COMPLICATION SHAKEDOWN」は、先の『Bringing It All Back Home』の1曲目を飾る「Subterranean Homesick Blues」にインスパイアされ、新たな韻律に踏み込んだ日本語初のヒップホップ的“第一声”だった。この曲のサウンド・デザインが象徴するように、1年間滞在したNYの街の鼓動が先鋭的に刻まれたアルバムは、それ以前の佐野の音楽性とも、当時の日本の音楽シーンとも異質だったため、音楽メディアを中心に驚き、戸惑い、絶賛が混在した。しかし一部の懸念をよそに、佐野が提示した、クールに思考しながらも激しくダンスする“コミュニケーション・ブレイクダンス”は、オリコンのアルバムチャート1位に躍りでる。佐野は、まさに時代の先駆者にして、次代の訪問者だった。
そしてオリジナルから20年後、21世紀にやってきた新たな“訪問者たち”。『VISITORS 20th Anniversary Edition』には、「TONIGHT」「COMPLICATION SHAKEDOWN」「WILD ON THE STREET」のSpecial Extended Club Mixがボーナス・トラックとして収められたが、9.11の米国同時多発テロ後の世界にあって、まるで「TONIGHT」は鎮魂歌のようでもある。“ニューヨーク...No more pain tonight”と。
またボーナスDVDには、お蔵入りとなっていた「COMPLICATION SHAKEDOWN」の“刺戟”的なPVも収録。音に映像に、そしてパッケージのアートワークに至るまで装いを新たにした『20th Anniversary Edition』は、脳天を踊らせ、足底に思考させる、そんな印象の未来仕様だ。
(城山隆)
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