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08 | 新レーベル「DaisyMusic」設立 | 2003-2004 |
2004年に佐野元春は、自分のための新レーベル「DaisyMusic」を設立した。その予兆となったのは、鎌倉芸術館で収録したスポークン・ワーズのライヴ盤『in motion 2003 -増幅』の発売方法を巡るやり取りだ。このアルバムは当初エピックが発売を予定していたが、当時のエピックの方針ではレーベルゲート2、コピープロテクト仕様の2枚組になる。佐野はそれを避けるため、急遽エピックからではなく、自分が運営する「GO4」から本作を5月に発売するという決断を下している。そして5月19日発売のシングル「月夜を往け」を最後に、佐野はエピックからの独立を宣言。新たに立ち上げた「DaisyMusic」からの第一弾として、5年ぶりのオリジナル・アルバム『THE SUN』を7月に発表した。
もともと彼は、日本の音楽業界の中でロックがビジネスとして成立する機運が高まっていた転換期ともいうべき1980年にエピックからデビューしている。エピックでの彼の活躍は、まさにそうした新しい動きを象徴するものだった。だが、こうして成立した日本の音楽業界の“80年体制”というべきものは、テクノロジーの発達に伴い、21世紀に入ってから様々な課題に直面する。特に2004年はコピー・プロテクト技術が音質や再生機器へ及ぼす悪影響の問題がクローズアップされていた。さらに音楽のデータ配信への取り組みの必要性などもあって、それまでパッケージを前提にしていたレコード業界は、再び構造的に大きく変化せざるを得ない状況を迎えていた。
そうした中で佐野は、既成のシステムに依存するのではなく、自らのコントロールで柔軟に新たな状況に対処するための実践の場として、大手のディストリビューションと提携することで“メジャー・インディペンデント”というべき性格を持つ「DaisyMusic」を設立したのである。こうした取り組みは、デビューから約四半世紀を経てもなお、彼が先駆者的な姿勢を持ち続けていることの証と見ることもできるだろう。
(志田歩)
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