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09 | アルバム『THE SUN』 | 2003-2004 |
2004年に独立レーベル「DaisyMusic」を設立し、その第1弾として2004年7月21日に発表されたオリジナル・アルバム。2001年から実に3年以上をかけて録音され、オリジナル・アルバムとしては前作『Stones and Eggs』から5年ほどのブランクを経て発表されたものだが、この間には様々な活動と共に、CCCDとの戦い、そしてエピックを離れ自主レーベルを立ち上げるなど激動の歴史があっただけに、本作のリリースは佐野元春にとっても極めて大きなエポックになったことだろう。それは同時にファンにも大きな出来事であった。
本作は2003〜2004年にエピックから発表されたシングル「君の魂 大事な魂」「月夜を往け」を含む14曲を収録した、彼らしいアルバムだ。当時TVやCMなどを通じてまた違った側面を見せてくれていた彼だが、本作は佐野らしい前向きな意志と、実験精神も含めた様々なアプローチのサウンドが満載された、充実した仕上がりだ。14編のロックがお互いに違った色合いを発しながらも、アルバムを通して聴き終えたときに感じる爽快感は特筆もの。
そして何より、全編から沸き上がる彼の変わらぬロック魂が理屈抜きに嬉しい。本作に込められた佐野の新たな決心、そして挑戦する姿は、間違いなく僕らの心の中に根づき、緩やかに変革へと向かわせるその原動力となるだろう。こんな混沌とした時代だからこそ鮮明に鳴り響くサウンドと彼の歌声は、時に優しく、そして激しく魂を揺らす。
またアルバムのトップを飾る「月夜を往け」で実践されたサウンドは、まさに「サムデイ」とも共通するスペクター・テイストであり、ここに原点回帰したことを個人的には極めて嬉しく思うと同時に、重要なメッセージとして受け取ったファンも多かったのではないか。帯裏に添えられた「夢を見る力をもっと。」というメッセージが、本作の制作意図を端的に表しているように思う。
なお初回限定生産盤はスペシャルDVD付きで、ここには本作の3年以上にわたるレコーディング・セッションの模様が映像として収められている。
(土橋一夫)
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