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10 | 書籍 「MOSTLY MOTOHARU〜WE WILL BE WITH YOU〜」 |
2005-2006 |
佐野元春のデビュー25周年記念というタイミングで、2006年に発行されたスペシャル・ブック。佐野の活動に関する膨大な情報を、一冊の本にまとめた大作である。
コンテンツの柱になっているのは、彼の活動を五つの時期に分けたパートだ。これは佐野が信頼するライターの書き下ろし原稿による「ヒストリー」、シングルやオムニバス盤、映像作品までを網羅した「ディスコグラフィー」、ライヴの日時、会場はもちろん、編成やセット・リストも掲載した「ライヴ・クロニクル」により構成されており、その後にミュージシャンや関係者など、総勢30人から寄せられたコメントを掲載。それぞれの時代の写真も多数使用した実に豪華な内容だ。
巻末部分からはアーカイヴ・データ集として活用できるようになっており、提供楽曲、プロデュース・ワーク、トリビュート企画も含むディスコグラフィ、彼が編集した雑誌『This』の紹介、さらに彼が担当したラジオ番組でオンエアした楽曲リストまでが整然と並べられており、資料としての機能的な充実ぶりも圧巻だ。
とはいえ同時に人間的な温もりを感じさせる趣向も凝らしており、彼がデビュー前の79年にノートに手書きした「グッドタイムス&バッドタイムス」の歌詞のコピーなどは、コアなファンの心をくすぐらずにはおかない付録だろう。さらに編集後記はない代わりに、この力作の編集・発行人として尽力したストレンジ・デイズの岩本晃一郎と佐野の対談を収録したCD-Rが付いており、まるで彼のラジオ番組のようなムードで、この本の制作にまつわるエピソードを楽しむことができる。
本書の目次の前には“「うまくやるんだ。でもうまくやりすぎるな」。ただひとつだけ、それだけをテーマにずっとやってきた。”という佐野の言葉が書かれているが、ある意味で本書は監修者である佐野の完全主義的な姿勢を示すものともなっている。
(志田歩)
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