02 | ミュージッククリップ・コンテスト 2007-2009

 2007年6月、アルバム『COYOTE』のリリースに合わせて、楽しくクリエイティブな雰囲気に溢れたネットイベント「佐野元春 ミュージッククリップ・コンテスト」が開催された。その名前が示すように、『COYOTE』からのリードシングル「君が気高い孤独なら」を課題曲として、ファンが思い思いのミュージッククリップ(プロモーションビデオ)を創作し、それをネット上で公開することでコンテスト応募し、優れた作品を作った方に「佐野元春ライブツアー&楽屋訪問」に招待するという企画である。

 今では、ネット上に動画を公開するのは何も難しくない。たいていの携帯電話には動画を撮影する機能があり、動画を公開するのもYouTubeをはじめ、さまざまなサイトが当たり前のように存在している。しかし、2007年は決してそうではなかった。動画撮影となればビデオカメラが必要であり、作ったものを公開するにも、ようやくYouTubeが日本語対応したばかり。しかもユーザーが公開する動画の著作権問題がつきまとっていた頃である。

 そこで、MWSは国内展開においてYouTubeより先行していたMySpaceとタッグを組んで公開の場を確保。さらに「君が気高い孤独なら」のコンテスト向けに著作権処理された90秒音源を配布することで、企画を実現させたのである。

 応募された作品は、映像、構成ともにしっかりしたプロによる作品もあれば、演奏に合わせて当てぶりして演じる、エアギターならぬエアプレイが可愛らしい作品もあり、実にバラエティに富んだものだった。最優秀賞となったのは、小さな姉妹二人が生き生きとしたエアプレイぶりを披露してくれた作品であった。

 こうした作品コンテストは、MWSにおいて伝統的なイベントでもある。2002年に発売された『SOMEDAY Collector's Edition』ではTシャツコンテスト、2004年の『VISITORS 20th Anniversary Edition』ではフォトコンテストを開催し、どちらも大成功を収めている。佐野のファンの創作力の高さ、楽曲や作品に対する理解と愛情があってこそ成立するイベントであろう。

(今井健史)

Next Column

Now and Then

このテキストは著作者本人にあります。掲載転載の際はwebmasterまでご連絡ください。