03 | スポークンワーズ・アルバム「BEATITUDE」 2007-2009

 2007年9月に発表された『ビーティテュード』は、1985年の『エレクトリック・ガーデン』から始まった佐野のスポークンワーズへの取り組みを網羅したスペシャルボックスである。BEAT+ATTITUDE=BEATITUDE。ビートニクスに憧れ、その精神を受け継ぎながらポップ・ミュージックの世界で活動してきた彼が、一方で追い求めてきた「ポエトリー実験」の総決算と呼んでもいい。

 収録内容は、まず2000年発表の『Spoken Words - Collected Poems 1985-2000』の復刻版。『エレクトリック・ガーデン』シリーズ、後に発表されたスポークン・ワーズ楽曲、雑誌『This』のイベントで披露されたライブを収めた限定CDブックの音源が収められている。

 次にDVD『In motion 2003 - 増幅』。2003年11月、鎌倉芸術館にて行われたライブ・パフォーマンスのノーカット映像だ。過去、音源のみCD化されていたが、井上鑑を音楽監督に据えたスペシャル・バンドとのステージングが瑞々しい。

 この2ディスクに加え、ボックスには92Pブックレットが封入。収録トラックの全詩、および解説と評論家による寄稿が掲載されている。その装いはクラシカルな詩集のようだ。

 ポエトリー、サウンド表現、そしてビジュアル??。それまで音楽活動のサイドワークとして捉えられがちだった佐野のスポークン・ワーズ作品であるが、地道なアプローチにより豊潤で濃密なスタイルを築き上げたことを伺い知ることができる、優良なコンピレーションになっていよう。同時期に出版された書籍『ビートニクス』との併読もおすすめしたい、ビート詩人=佐野元春の果敢なトライアルがパッケージされた作品集である。

(増渕俊之)

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