07 | インターネットへの取り組み 2007-2009

 今や音楽とインターネットは切り離せない関係にある。音楽プロモーションや楽曲流通は言うに及ばず、音楽を知ってもらうためのあらゆるアイデアが“ネットありき”という状況になってきている。そうした中、佐野とインターネット・スタッフが15年トライしてきたことは、常にその時代時代において先駆的であった。そしてそれ以上に、佐野の音楽を中心に据えたファン・コミュニティを作ろう、という意識をもっていた。それだけに、インターネットへの取り組みは、常にファンからの視点を持ち得ていた。

Moto's Web Serverは、オープン当初から一貫してコミュニティのための場を用意してきた。旧来の“対話型”掲示板スタイルに始まり、現在では“テーマ”を中心にファン同士が繋がっていく「カフェボヘミア」に至るコミュニティボードへの進化は、先に上げた「佐野の音楽を中心に据えたコミュニティ」作りを時代時代で模索してきた結果と言える。

 2000年のデビュー20周年を記念して作られた特設サイト「eTHIS」では、インターネットにおけるビジネス面へのトライもあった。自前のオンラインストアでCD書籍『スポークン・ワーズ』を完全受注生産でネット販売したのは、国内でアマゾンが立ち上がるのとほぼ同時期である。「自前主義」を標榜する佐野とインターネット・スタッフは、その後もMWSストアと形を変えたオンラインストアで多くのオリジナル商品を企画し、ネット販売している。

 別項で詳細を記している2001年の「光」のMP3無料配信、長い時間と紆余曲折を経て完成された『THE SUN』の制作過程を克明にレポートした『地図のない旅』をウェブのみで発表するなど、音楽の商業流通やプロモーションといった「音楽ビジネス」の枠組みでは難しい(そして同時に佐野の核心が垣間みれる)試みを、Moto's Web Serverは丁寧に形にしてきたといえるだろう。

 ウェブサイトの機能が細分化・分散化する中、2007年以降、MWSも積極的に外部サイトを活用するようになる。ソーシャルはMySpace、映像配信はYouTube、メッセージ伝搬はTwitterにそれぞれチャンネルを設ける他、史実資料はWikipediaにリンクするなど、外部のウェブ機能を適宜組み合わせて新しいアクションに繋げている。

 また、インターネットに接続できるデバイスが変容してきている中、携帯電話向けに「DaisyMusic Mobile」、iPhone/iPod touch向けに「MWS for iPhone」を展開するなど、今後のインターネットの流れも見据えている。

(今井健史)

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