08 | 立教大学オープン講座「ザ・ソングライターズ」 2007-2009

 創作や表現、パフォーマンスやメディア。一貫して、若い世代への語りかけを積極的に行ってきた佐野元春は、2007年からアカデミー・ワークを本格的に手がけることになった。母校立教大学、文学部からの熱意ある呼びかけに応えて、2007年度後期授業を担当した。科目名は「Spoken Words −共感伝達としての『言葉』と『音楽』」。文芸・思想専修課程の学生たちを含む50余名が、クリエイティヴ・ライティングの演習を含み、佐野教官の直接指導を受けた。

 言葉を音楽化する行為=スポークン・ワーズを「世代間の共感伝達」として捉え、実践を通じてその先に繋がる意識を探求するのがクラスの狙いだ。週一回の講義にとどまることなく、詩作を日常の関心に高めるため、佐野は自らクラス専用のウェブサイトを立ち上げ、即日講義の概要をアップデイト、佐野クラス通信をe-mail配信して、生徒たちとのインタラクティヴな交感を啓発していった。

 さらに、2009年1月から9月にかけては、立教大学文学部100周年記念事業の一環として、佐野の企画構成による公開講座「ザ・ソングライターズ−音と言葉の創作ノート」が展開された。同時代のソングライターとの対話を通して、音楽詩の諸相を探り、創造的なソング・ライティングの本質に迫る連続講座である。佐野が長く温めてきたこのアイディアと趣旨に賛同して、小田和正、松本隆、さだまさし、スガシカオ、矢野顕子、Kj(Dragon Ash)が各回のゲストとして登場、創作をめぐる真摯なダイアローグを交わした。

 オープン・クラスの模様はNHKによって番組化され、同年7月から9月、ETVの土曜23時台に30分枠で初回放送され、6人のゲストがそれぞれ2週連続で登場した。再放送を含めて驚異的な視聴率を記録し、放送批評懇談会のギャラクシー賞7月度月間賞を受賞するなど、放送直後から大きな反響を呼んだが、貴重なアーカイヴとして未来にも託されていくだろう。

(青澤隆明)

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