![]() |
10 | ツアー「COYOTE」 | 2007-2009 |
アルバム『COYOTE』は、佐野元春が2007年6月13日に発表した通算14作目のオリジナル・アルバム。コヨーテと呼ばれる一人の男の視点で切り取った12篇のストーリーからなる、架空のロード・ムービーのためのサウンドトラックという設定で作られたコンセプト・アルバムだ。
その『COYOTE』リリースから約2年後となる2009年7月、全国のライヴハウスを回る「コヨーテ・ツアー」が行なわれた。7月4日の赤坂BLITZを皮切りに、横浜、新潟、福岡、広島、大阪、名古屋、仙台、そして26日に再び東京に戻ってのZEPP東京まで、9都市計10公演。
ツアー・メンバーは、アルバムのレコーディングに参加した深沢元昭(g/Mellowhead)、小松シゲル(ds/Nona Reeves)、高桑圭(b/Great 3)の3人だ。ツアーでは、05年にリリースされたシングル「星の下 路の上」のカップリング曲を間に挟みながら、アルバム楽曲が収録順に演奏された。アンコールでは『COYOTE』収録曲以外の楽曲も演奏されたものの、基本的にアルバム収録曲を中心に構成された内容は、既発作品をバランスよく配したこれまでのツアーとは異なる、新鮮な味わいのあるものだった。
また、このツアーでは7月4日の東京と翌5日の横浜の2公演を、iPhone、YouTube、Twitterを使用し、ライヴのインターネット・レポートを行なうという実験も行なわれている。佐野のオフィシャル・サイト「Moto’s Web Server」と、自身のレーベル「DaisyMusic」が連携し、当日のステージの模様はもちろんのこと舞台裏までiPhone 3GSで動画撮影。その場からYouTubeで公開し、それをリアルタイムにTwitterでファンに告知するというもの。これまでも多くのアーティストがインターネットでライヴ中継は行なっていたが、それは前もって入念な下準備を行ない、さまざまな機材を駆使した大掛かりなものだった。しかしここで行なわれたのは、最小の機器でできるだけ多くのファンにその状況や熱気を生で伝えるという、ネット黎明期からその利用法を考えてきた佐野ならではの試みだ。
セットリスト、ツアー・メンバー、ライヴ会場、インターネットを使った実験など、あらゆる面で新たな挑戦が行なわれた、エポックメイキングなツアーだったと言えるだろう。
(池田聡子)
Next Column![]() |
このテキストは著作者本人にあります。掲載転載の際はwebmasterまでご連絡ください。