ハートランドからの手紙#113
掲載時:99年8月
掲載場所:ファンクラブ会員へ宛てたデビューメッセージ
掲載タイトル:「GO MOTO! - 20周年を迎えて」

西洋の暦に従えば、世紀もさしせまって、あわただしさも増してきている今。
みなさんの心中はどのようなたたずまいをしているんでしょうか?

僕の場合、来年にデビュー20周年!を控えて、ああ、そのような時間の流れに
あるのだな、と、しばし沈思。

これまで応援してきてくれたみなさんにまず心から感謝をします。

言葉を紡いで、音楽とする。そのつどの成果を披露しに旅に出る。
そうしたなりわいを通じて、僕のアートはこれまで、みなさんの日常にどれほど語りかけることができただろう?
みなさんとともに抱いた時代、ともに見た景色。ともに交した約束や情。
ことの正否を越えて、それは僕らなりの意味のあるヒストリーとなった。

活動を通じて、こうして通過してゆく時を、みなさんとともに目撃できることが、
とてもうれしいです。

新作「Stones and Eggs」のインタビューなどを通じて、よく聞かれます。
「20周年に際して思うことは?」

まっさきに思うことは、僕の音楽の聴き手への「ありがとう」です。

これまでの活動を振りかえってみれば、ずいぶん道草が多かったように思う。
その道草は、冒険やリスクが伴うものもあったけれど、そのたびにどこからか聞こえてくる声があった。

「GO MOTO!」

前進に向けて、停滞に向けてのGO。革新に向けて、保守に向けてのGO。
それは、僕が躊躇しているとき、心の弦がたるんでいるとき、迷っているときの、景気づけとなった。
その声は、僕の音楽の聴き手からの声でもあった。

もし、その声がなかったら。
僕は臆病なアーティストのままだっただろう。

今ここにいて、静かにそれを確信します。

今年から21世紀に向けて、僕はさらなる飛躍を試みて、新作レコードにライブにいっそうがんばります。
応援をよろしくお願いします。
近いうちに、またどこかで会えることを楽しみにしています。

スマイルを忘れず、人生を楽しんでください。
21世紀を目前に、みなさんの夢が叶うことを祈って。

佐野元春
1999 夏


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