1996年12月16日・17日に開催された佐野元春「フルーツ・パンチ」武道館ライブの模様がインターネットを通じて配信された。企画・制作・運営はMIPS。佐野元春のインターネット活動を支援するボランティア・チームだ。
コンサートの模様を、ステージ、楽屋、ロビーから多元中継。簡易デジタル・カメラと初期のReal Audio技術を駆使し、
非商業レベルのインターネット中継を実現した。約数十秒に1ショットの映像を届けるという今となっては原始的ともいえる配信実験ではあったが、当日は国内ファンはもとより、海外に在住のファンからのメッセージもリアルタイムに届き、まさにインターネットの特性を活かした画期的なイベントとなった。
イベントでは武道館からの映像・音声中継に加えて、ビューアー参加型の掲示板を設置。参加者によって残されたログを見れば、このイベントがいかに感動的であったかがわかる。
そもそも佐野とMIPSがインターネットでのライブ中継配信に踏みきったのは単純な理由からだった。ネット配信によってビジネスをもくろむ前に、彼らはネットの仕組みそのものがファン・コミュニティーをより楽しくすることを知っていたからだ。佐野の音楽でつながるファン同志が会話したり、情報を交換することで、ネット上にいきいきとした交流の場を生みだしたかったのだ。
インターネットの黎明期にあって、佐野とMIPSが初々しい理想を掲げた1996年。国内におけるコンサート・ライブ中継としては初めての試みとなったこのネット・イベントが開催された意義は大きい。
●参考URL
佐野元春「フルーツ・パンチ」武道館ネット・ライブ