03 | ツアー「Rock & Soul Review」 2001-2002

 2001年6〜7月に大阪、仙台、東京、福岡、名古屋で行なわれた「Rock & Soul Review」は、その3年後に『THE SUN』というタイトルでリリースされることになるニュー・アルバムのレコーディング中に敢行された異例の全国ツアーだった。


 元ザ・ハートランドの古田たかしをドラマーに迎えた新生The Hobo King Band(以下 H.K.B.)に、マルチ・リード&ホーン・プレイヤーの山本拓夫とヴォーカリストのメロディー・セクストンが加わったスペシャルな編成によるこのツアーは、21世紀最初の佐野のライヴ・アピアランスにふさわしく、多分に実験的な試みが目立つものだった。


 ジャム・バンドばりのインプロヴィゼイションを大胆にフィーチュアし、ミュージシャンたちのインタープレイによって楽曲の形を多様に変化させてしまうそのパフォーマンスについてはファンの間でも賛否両論があったものの、それは表層的なスタイルの変化などではなく、その後の佐野とH.K.B.の進化にとって必要不可欠な挑戦だった。


 ツアー終了後にスタジオ録音された「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」の斬新なH.K.B.ヴァージョン(03年に「君の魂 大事な魂」とのカップリングでシングル発売)、レコーディング中のニュー・アルバムからの新曲として紹介された「君の魂 大事な魂」や「最後の1ピース」、ロック・コンサートで初めて披露されたスポークンワーズ作品「冗談の探求」なども含めて、「Rock & Soul Review」は新たな世紀における佐野元春のニュー・サウンドを探求するための実験と冒険の旅でもあった。

 そして、彼らのその旅路は翌年のファン・クラブ限定ライヴ「Plug & Play '02」や翌々年の全国ツアー「THE MILK JAM TOUR」へと繋がり、4年もの制作期間を費やした大作『THE SUN』にも大きな影響を与えることになる。21世紀の佐野とH.K.B.の最初の一歩、と言ってもいいかもしれない。

(吉原聖洋)

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