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09 | 『SOMEDAY Collector's Edition』 | 2001-2002 |
『SOMEDAY』リリース20周年を記念して、ボーナス・ディスクを追加した2枚組の完全生産限定盤として2002年5月22日に発売された本作は、三方背BOX仕様で復刻版ポケットブックと特典の紙ジャケットを同梱した、ファン待望の内容となった。
収録曲は前田康二によるリマスタリングで鮮やかに甦り、特にストリングスやブラスを用いた曲の音像の広がりは見事だ。当時スタジオで思い描かれた音が、CDフォーマットを通じて初めて忠実に届けられた、と言っても過言ではないだろう。本作は佐野元春がセルフ・プロデュースに挑戦した初のアルバムでもあり、初期サウンドを紐解くためにも本作の登場は意義深いことであった。
以前筆者が佐野にインタヴューした際、『SOMEDAY』のサウンドについてこう語ってくれた。
「これはフィル・スペクターというよりは『ナイアガラ・トライアングルVol.2』で大滝詠一さんのセッションを見たときの印象が強くて、それに影響されたという方が近いかも知れない。『レコーディングはこうすればいいんだ』って思いましたし、そういう意味でも大滝さんには感謝しています」
このように本作は、大滝詠一から学んだノウハウを自分なりに試行錯誤した結果生まれたものだ。しかも1982年と言えば録音技術もアナログからデジタルへの端境期だったことを考えると、本作はデジタルの台頭によって当時のシーンが失いかけていた“熱”を敢えてとじ込め、人間力の素晴らしさを呼び覚ました作品、と言えるかも知れない。そして今なお『SOMEDAY』が放つパワーは変わらないことを本作は証明してくれた。
なおボーナス・ディスクには初CD化の「シュガータイム」シングル・ヴァージョン(mono mix)や、そのB面で未CD化だった「ワンダーランド」(mono mix)、「スターダスト・キッズ」「バイバイ・ハンディラブ」「ソー・ヤング」「ダウンタウンボーイ」のオリジナル・ヴァージョン、伊藤銀次とのやり取りも聞こえる「サンチャイルドは僕の友達」(another mix)等、ファン感涙の音源が満載である。
(土橋一夫)
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