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10 | FM番組「TOYOTA RADIOFISH」 | 2001-2002 |
2002年10月から2005年3月までの間、毎週土曜夜8時からの一時間、TOKYO-FMをキーステーションにJFN全国8局ネットでオンエアされたのが「レイディオフィッシュ」だ。
ラジオDJをライフワークのひとつとする佐野には、「Less Talk, More Music」「良い音楽があれば、良い紹介者もいなければならない」という変わらぬ哲学がある。この「レイディオフィッシュ」でもそのスタイルは一貫していた。
番組の大まかな編成は、1週目「アコースティックス」、2週目「ロック・クラシックス」、3週目「フェイバリット」、4週目「リスナーズ・チョイス」。実質50分弱の時間の中で8曲から10曲のプレイリストが構成されていた。選曲の基準は「アダルト・オルタナティブ」。ヒットチャートを賑わせる音楽も楽しいが、成熟した音楽の聞き手が自分にフィットする音楽を探すのもまた楽しい。そんな考え方が番組を通してリスナーに提示された。
番組が国内リスナーに紹介したものの中で特に重要だったのが「ジャムバンド」である。ライブにおける即興演奏を主体としながら、プレーヤーのインプロビゼーションだけではなくバンドのアンサンブルに重きをおく、幅広い音楽性をもったバンドが多数紹介された。『THE SUN』(2004年)におけるThe Hobo King Bandサウンドにジャムバンドの要素が多数含まれているのも、こうした連なりの中にいたからであろう。
一方「レイディオフィッシュ」は、ジャーナルな視点も併せ持っていた音楽番組だ。「我々の環境に何が起こっているのか?」という視点で、環境に関するニュースを提供する「エコロジー・レポート」が毎週コーナー化されていた他、環境活動家であるレスター・ブラウンや、シンガーソングライターのジャクソン・ブラウンに佐野がインタビューをして番組内で紹介された。
「レイディオフィッシュ」で紹介された音楽や情報は、残念ながらマスメディアだけを追っていてはなかなか知る機会が少ない。佐野はラジオの力をいつも疑わないし、ラジオこそが音楽と最も親和性の高いメディアだと信じている。さらに番組とリスナーを繋ぐツールとしてインターネットを活用するスタイルを「レイディオフィッシュ」で既に完成させていたのだ。
(今井健史)
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