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11 | ファンクラブ限定ツアー「Plug & Play '02」 | 2001-2002 |
2002年の秋に佐野は「Plug & Play '02」と銘打ち、The Hobo King Bandを率いて9月20日の名古屋クラブダイアモンドホールから10月14日の横浜赤レンガホールまで、4ヶ所6公演にわたるファンクラブ限定のツアーを行っている。新作と連動したアクションではなく、この年の5月には『サムデイ』の発表20周年を記念した『SOMEDAY Collector's Edition』がリリースされたこともあって、おそらくファンの中にはノスタルジックな気分で会場に足を運んだ者も少なくなかっただろう。しかしこの時の公演は、そんな気分を吹き飛ばすほどのインパクトに満ちていた。
楽曲は確かにお馴染みのものばかり。だが椅子に座って佐野が奏でるアコースティック・ギターを中心にしたセミ・アンプラグドともいうべきスタイルによるアレンジは、極めて斬新。その新たな解釈は、ボブ・ディランを連想させるほど大胆なもので、ノスタルジーに浸るどころか、ヴォーカル・スタイルも含めて新たな領域への挑戦ともいうべき前のめりな姿勢を提示していた。
しかもそのようにして披露されたかつての楽曲の中には、NYの同時多発テロや北朝鮮による拉致事件などに揺れる当時の世相と見事にシンクロするものも多い。ある意味で予言的とさえ言いたくなるほど、時代を越えたリアリティを放つ佐野のソングライティングの凄みを再認識させるものだったのである。
04年に佐野は5年ぶりのオリジナル・アルバム『THE SUN』をリリースした際、現実を凌駕していると感じられる楽曲を生み出そうとして、新曲を書いては捨て、書いては捨てという行為を繰り返した時期があったと述べている。そうしたソングライターとしての苦闘は「Plug & Play '02」での彼のパフォーマンスにリンクしていたのではないだろうか。
なお、このツアーの模様は翌03年2月にリリースされたDVD「Plug & Play '02」と、シングル「Tonight(Live)」に収録されている。
(志田歩)
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