北村 ● やはり、Greatful Dead なんかが特にそうなんですけど、'50年代のビート・ジェネレーションの思想というのが、「一番最初に浮かんだことが最良のことである」というのがあります。バンド内でのせめぎ合いというのは「一番最初に浮かんだこと」ですよね。'50年代にその思想に対して影響を受けたバンドというのは、多分すべてそうだと思います。Santana なんかもその傾向はありますよね。Allman Brothers Band や、ロサンゼルスでは Little Feat、もちろん最近の Bob Dylan なんかはその影響がモロにあります。
::: では、'60年代に出てきたドラッグ・カルチャーやヒッピー文化なども絡んできますか?
北村 ● やはり、ビート・ジェネレーションの後輩がヒッピー・ジェネレーションになっていくので、その影響はかなり濃く残っていると思います。「ビート」というのは '50年代に流行ったジャズも影響しているので、ちょっと音楽的にはかなり違うんですが、Steely Dan などはジャム・バンドではなくてライブは苦手なんですけど、そういう思想はかなり残っています。それは、歌詞の部分で明確ですよね。
北村 ● Trey Anastasio の今回のソロ・プロジェクトというのは、基本的には '85年からコンセプトが始まってるんですよ。彼は当時、サルサの音楽に影響を受けていて、最近では Buena Vista Social Club や Ry Cooder のソロアルバムが出ていますが、それに影響されて作ったというのがこのアルバムです。
::: 他のジャム・バンドでもラテンタッチの曲もありますよね。
北村 ● ありますよね。私はミュージシャンじゃないので、リズムのことはすごく難しくて勉強中なんですけど、キューバ音楽というのはビートがかなり難しいらしいんですね。ミュージシャンにとってはそれが面白くて難しい、研究してみたいという対象になるみたいですね。例えば、'70年代のシンガー・ソングライターの James Taylor のギターなんかは、完全にボサノバを意識したりしていますよね。 現在の Trey Anastasio は、ライブでもアコースティック・ギターを多用したりするんですよね。いわゆるオーガニック楽器を使いたがるんです。やっぱりエレクトリックとかコンピュータを使うとどういうものでも作れちゃうので……。