RF Interviews
北村和哉 | ジャムバンドの魅力




::: レイディオフィッシュでは、ジャム・バンドをこれからもどんどん紹介していきたいということで、そもそも「ジャム・バンドって何?」という疑問があると思うんです。

北村 私の見解では、CDのリリースを念頭に置くよりもライブ活動を中心に活動していくバンド。だから、ジャム・バンドよりもライブ・バンドという言い方のほうが分かりやすいのではないかと思います。

::: この番組を聴いてジャム・バンドというジャンルを知った方も多いと思うんですけど、インプロビゼーションが特徴ですよね。

北村 インプロビゼーション、即興音楽ですね。いわゆるジャズを聴かれている方は分かりやすいかなと思うんですけど、それのロックバージョンですね。だから、「今はドラムはどんなことを考えながらやってるのかな?」とか、「ギターのヤツはどういうフレーズを弾くのかな?」っというようなことを、他のメンバーが感じ取りながら、ステージの上でも試行錯誤していく。ある種、バンドとしては見せたくない部分も一緒に見せる。また、即興音楽でバンド内でお互いのフレーズの探り合いをしていきながらも、「今ひょっとしたら、客はアップテンポの曲が聴きたいのかな?」とかっていうのも探っている。それが一致したときに、会場全体がステージと客席とで一体になる。バンド内でのコール&レスポンスもあり、客席とのコール&レスポンスもありという形のバンドですよね。だから、ショーそのものがその場かぎりのパッケージみたいなものであって、すごく楽しめるということですよね。

::: それで、ロックの分野でのジャム・バンドの源流というのは何かありますでしょうか?

北村 やはり、Greatful Dead なんかが特にそうなんですけど、'50年代のビート・ジェネレーションの思想というのが、「一番最初に浮かんだことが最良のことである」というのがあります。バンド内でのせめぎ合いというのは「一番最初に浮かんだこと」ですよね。'50年代にその思想に対して影響を受けたバンドというのは、多分すべてそうだと思います。Santana なんかもその傾向はありますよね。Allman Brothers Band や、ロサンゼルスでは Little Feat、もちろん最近の Bob Dylan なんかはその影響がモロにあります。

::: では、'60年代に出てきたドラッグ・カルチャーやヒッピー文化なども絡んできますか?

北村 やはり、ビート・ジェネレーションの後輩がヒッピー・ジェネレーションになっていくので、その影響はかなり濃く残っていると思います。「ビート」というのは '50年代に流行ったジャズも影響しているので、ちょっと音楽的にはかなり違うんですが、Steely Dan などはジャム・バンドではなくてライブは苦手なんですけど、そういう思想はかなり残っています。それは、歌詞の部分で明確ですよね。

::: ジャム・バンドと言っても、ジャズ・ファンク・ブルーグラスなど、いろんな音楽ジャンルが全部融合されているというイメージがあるのですが。

北村 実際には、ライブ・バンドである以上は演奏が上手くなければいけない。やはり演奏形態が上手いバンドとなると、ジャズやブルーグラス、ファンクやR&Bをベースに置いている中から、いろんなモノをチョイスしてきている。ジャズ系では日本では Soulive がすごく人気がありますし、Medeski Martin & WoodThe Jazz Mandolin Project とか、「BLUENOTE」というレーベルがそういうのを追いかけてますよね。ファンクでは Robert Randolph とか、ブルーグラスでは日本盤も少し出てたんですけど Béla Fleck & The FlecktonesDave Matthews Band なんかは、バックの人たちは基本的にジャズ系のミュージシャンなんですよね。

::: 例えば、Trey Anastasio を番組でも紹介しているんですけど、結構ラテンタッチの曲もありますね。

北村 Trey Anastasio の今回のソロ・プロジェクトというのは、基本的には '85年からコンセプトが始まってるんですよ。彼は当時、サルサの音楽に影響を受けていて、最近では Buena Vista Social ClubRy Cooder のソロアルバムが出ていますが、それに影響されて作ったというのがこのアルバムです。

::: 他のジャム・バンドでもラテンタッチの曲もありますよね。

北村 ありますよね。私はミュージシャンじゃないので、リズムのことはすごく難しくて勉強中なんですけど、キューバ音楽というのはビートがかなり難しいらしいんですね。ミュージシャンにとってはそれが面白くて難しい、研究してみたいという対象になるみたいですね。例えば、'70年代のシンガー・ソングライターの James Taylor のギターなんかは、完全にボサノバを意識したりしていますよね。
現在の Trey Anastasio は、ライブでもアコースティック・ギターを多用したりするんですよね。いわゆるオーガニック楽器を使いたがるんです。やっぱりエレクトリックとかコンピュータを使うとどういうものでも作れちゃうので……。

::: それはジャム・バンドということから離れていきますよね。テクノロジーを駆使しちゃうと、即興性という部分が失われてしまいますよね。

北村 それに演奏能力を表に出したい。ひとつ、ジャム・バンドの欠点ではあるんですが、アルバムにしてしまうと下手をするとフュージョン・バンド。だから、スタジオ録音では良いものが作りにくいんですよね。もうひとつジャム・バンドの特性として、(新曲を)アルバムで発表するよりもライブで先に発表していく。ライブで新曲を繰り返しながら、曲を熟成させるというのがあります。

::: 現在のジャム・バンド・シーンでおすすめのバンドはありますか?

北村 まずは Phish ですね。あとは、騙されたと思って Los Lobos のライブを見に行ってください。それと、やはり Little Feat は良いですよね。Robert Randolph & The Family Band も良いバンドだと思います。それから String Cheese IncidentMoe はサザンロック系で、面白いバンドですよね。Bob Dylan はジャム・バンドだと思ってます、彼は何でもありですから。彼女をジャム・バンドと言って良いのか分かりませんが、Ani DiFranco はすごいですね。Emmylou Harris のライブもジャム・バンドっぽい。あまりジャム・バンド・シーンというのを意識していないんですが、やはりライブが良いです。

::: ジャム・バンドのファンの間では「テープトレード」というのが行われているそうなんですが、これは何なんでしょうか?

北村 「テーパー」と呼ばれている人たちがいて、いわゆるライブ会場でテープに録音するということですね。もちろん、バンドによってはダメな人もいますしOKな人もいます。OKな場合には、チケットに「オーディオOK」と書かれていたりとか、 Phish などは来日公演でもありましたが、「テーパーズ・セクション」という少し割高な料金を払ってそこで録音しても良いというブロックがあります。Greatful Dead などもそうでしたね。毎回ステージで演奏する曲が違うので、録音しても良いですよということです。CDショップでジャム・バンドのコーナーを見ると、ライブアルバムが異常に多いということにお気づきになっているのではないでしょうか。

next



Contact Us | Copyright 2002 M's Factory Music Publishers, Inc. All rights reserved.