RF Interviews


::: 日本で人気のジャム・バンドというのは何かありますか?

北村 やはり Phish は代名詞ですからね。これは私だけの見解なんですが、現在の40代とか50代の人たちにとっては、海外に留学すると言うことはほとんど無かったと思うんですね。ところが、今の20代の人たちは当たり前のように留学しています。アメリカでの同年代の友だちが増えたりしているので、すごく情報が入ってきやすくなっている。だから、感覚的には欧米の感覚に似たものを持っているので、日本でのジャム・バンド・シーンというのも、そう言う人たちには分かりやすいものなんではないでしょうか。あとひとつ、ヒッピー世代の子ども達をアメリカでは「レインボー・ピープル」と呼んでいますが、今の20代前半なんですよ。だから、お父さん、お母さんが好きだった Greatful Dead と、今、自分たちの好きな PhishString Cheese Incident というのはよく似ているんですよね。

::: ジャム・バンドの魅力についてお訊きしたいのですが。

北村 ジャム・バンドのひとつの特性としては、これはローリングストーン誌でも特集されたんですけど、インターネット上で大きくなってきたバンドというのがあります。今では当たり前のようにして、レイディオフィッシュでもウェブがありますが、ほんの7〜8年前まではそういうことをしている人たちは限られていて、その中で大きくなってきたバンド、Phish などはそうですね。バンドによってはネット上で新曲やライブテイクを流したりして、大きくなっているんですよね。

::: では、インターネットはジャム・バンドにとっては大切な要素でしょうか。

北村 要素でしょうね。20世紀は、映画も音楽も複製品の大量生産の時代だった。アナログレコードからCDになったりした時代で。でも、ライブパフォーマンスというのは1回性の魅力、その場だけの魅力というのがあるので、それは複製品とか大量生産の時代に対する反動でもあるわけなんですよね。だから、音楽でいうとアルバムよりはライブ、映像でいうと映画よりも芝居・舞台でのパフォーマンス、写真よりも絵画ということですよね。21世紀というのは、身体性の有無を問われる時代、肉感的かそうでないかということですね。ライブは、その身体性がある感覚がします。

::: これまでで、印象に残っているライブはありますか?

北村 Jerry Garcia が他界する1月前、Greatful Dead の一番最後のツアーですね。1995年6月18日だったと思うんですけど、この時のライブは Jerry Garcia がすごく元気が無くてひどかったんですが、今となってはそれが最後ですから印象に残っていますね。 Phish では、1998年のハロウィーンの前日、ラスベガスで見たステージはすごく良かったです。それと、1999〜2000年に変わるニューイヤーズ・イブ、フロリダで見た7時間連続のステージは強力でした。他には、Pearl Jam などはすごく印象に残ってます。彼らなどは演奏能力という部分では低かったりするんですけど、Neil Young が毎年やっている「ブリッジ・スクール・コンサート」というのがあって、そのコンサートはアコースティック楽器しか使ってはいけないんですよね。彼らは最初、アコースティック・セットは下手だったんですが、そこで毎回やるようになってかなり上手くなってきたし、自分たちも練習したという意味では、印象に残っていますよね。

::: それでは、Pearl Jam もジャム・バンドに進むんでしょうかね?

北村 もちろん、1回性の魅力というところはパフォーマーである以上は意識せざるを得ないですし、アーティストと呼ばれる人たちは時代の匂いというものをすごく敏感に感じ取る人たちだと思うんですね。ジャム・バンドというカテゴリーにはめ込むのは乱暴かもしれませんが、ジャム・バンドが生まれてきた必然的な状況・時代背景においては、彼らもそれを感じ取ってやりだした。それは、Pearl Jam だけではなく、Neil YoungBob Dylan も感じ取ってやってきた。こんなことを私が言うのはおこがましいですが、聴く者も同じように身体を使ってその匂いを感じ取っていかないと、理解しがたいのではないかと思いますよね。

::: 日本のジャム・バンドというと、何か思い浮かびますか?

北村 私はあまり良く知らないんですけども、ライブ活動をメインにしているインディペンデントのバンドというのはかなり多いですよね。 Phish が来日公演したときに、日比谷野外音楽堂でオープニングをやった BigFrog というバンドなんかはそうですよね。彼らは自分たちでアメリカに行ってライブをやったりしています。インターネットがある以上はどこでも簡単に連絡が取れたりするので、それをどれだけ家の外で駆使するか、身体性の部分ですよね。そのことを意識していないアーティストは難しくなっていくと思いますね。

back



Contact Us | Copyright 2002 M's Factory Music Publishers, Inc. All rights reserved.
close