「ザ・ソングライターズ」とは ── 佐野元春

最近よく「詩=言葉」は力を失ってしまった、と言われます。たしかに現代詩が文学ディレッタントに終始する一方、唄の詩人達=ソングライターたちの言葉は、深く人々の心に届いています。そう考えると、ソングライター達こそが、現代を生きている詩人といえるのではないでしょうか。

「ザ・ソングライターズ」では毎回、活躍中の一級のソングライターを招いています。聞き手は僕、佐野元春。ゲストの皆さんとの対話を通じて「ソングライティングとは何か?」を深く探っていきます。

僕がこの企画を思いついたのは、米国で放送されているTV番組「アクターズ・スタジオ」を観たことがきっかけです。司会者や観客との対話を通じて、ゲストである役者の、演技者としてのアイデンティティが徐々に明らかになっていく様子を見て、これはすばらしいな、と思いました。

会場は僕の母校である立教大学。クリエイティブライティングを目指す学生の皆さんに集まってもらっています。

よく人から「作詞・作曲は感性で行われるのか?」と問われますが、僕は結構、技術と経験がものを言うんじゃないかと思います。曲というと大抵3〜4分で終わりますが、ソングライターにとってはこの時間が勝負となります。言ってみればソングライターは短編作家です。この短い時間の中で何か一端の事を言おうと思うと、かなり難しい作業になります。

創作の方法はさまざまありますが、ソングライターはそれぞれ独自のメソッドを持っているのではないかと思います。

“ポップソングは時代の表現であり、時代を超えたポエトリー”。'70年代に始まって現在まで、ソングライター達が行ってきたことを俯瞰して見てみると、ソングライティングというのは、文学や演劇と同じような現代的なパフォーミングアーツであり、アートフォームとして捉えていいのではないでしょうか。

「ザ・ソングライターズ」では、音楽を伴った言葉や詩をよく観察し、その意義と表現の可能性について、皆さんと一緒に探求していきたいと思います。

論文・ソングライティングについて1995年9月に雑誌「THIS」に掲載された「ハートランドからの手紙 #90」。元春によるソングライティングに関する論文テキストテキストを読む

「ザ・ソングライターズ」に際して元春から毎回のゲストに宛てられた、講義および番組の主旨を説明した文面テキストを読む

視聴者から番組への感想番組を観た方々から、たくさんの感想が寄せられています。あなたもぜひ自由な感想をお寄せください感想を読む