06 | ポエトリー・イベント「Beat-titude」
1993-1994



 1994年12月3日〜4日の2日間にかけて渋谷パルコ・スペース3で開催されたイベント「Beat-titude――新たなる言葉の復権にむけて」は、第3期「THIS」のスタートに連動したプロジェクトである。

 このイベントは、文学運動としてのビートをアートとの関わりを通して一望する回顧展を企画していたリサ・フィリップス(ニューヨーク・ホイットニー美術館キューレーター)のアイデアに佐野が呼応するかたちで実現した。

 
後ろ左から、D.アムラム、M.マクルーア、MOTO、L.フィリップス、R. マンザレク

 プログラムの開始は、リサ・フィリップスとスティーヴ・ワトソン(美術史家)のスライド・レクチャー。ビートの歴史とユース・カルチャーの様々な分野への影響が説かれた後、ロバート・フランクが手掛けた短編映画『Pull My Daisy』(1959年)が上映された。ジャック・ケルアックが脚本とナレーションを担当し、彼やアレン・ギンズバーグらが出演したモノクロ映像は、30分という短い作品ながらビート創始期の芳香をふんだんに漂わせた貴重な16mmフィルムである。

 1日目はその後、同作品の劇伴奏を担当し、多彩な活動から“現代アメリカ音楽のルネッサンスマン”と呼ばれるデヴィッド・アムラムが登場。佐野とは同年夏、コロラド州ボールダーでおこなわれた「Beat and other Rebel Angels」で邂逅(かいこう)し、このイベントのきっかけを作った人物でもあるが、 フルートの演奏とポエトリー・リーディングを合わせた器用なライヴ・パフォーマンスが演じられた。

 2日目は、西海岸でビート・ムーブメントの重鎮をつとめた作家マイケル・マクルーアと、ザ・ドアーズのキーボーディストだったレイ・マンザレクによるコラボレーションが行なわれた。1987年からコンビを組み、1991年には『Love Lion』と題されたCD作品も発表している彼らは、「衰えゆく地球を人々が知覚し、破壊的な本能を捨て去り自らの魂を救うこと」をテーマにしたセッションを披露。シンプルなピアノのリフに重厚な言葉の朗詠が会場を満たした。

 両日ともにプログラムの最後に佐野が出演。デヴィッド・アムラムと越智兄弟(アルバム『Sweet 16』に参加したパーカッション・チーム)とのセッションにより「廃虚の街」「ポップ・チルドレン―最新マシンを手にした陽気な子供たち」の2曲と、バッキングなしの「自由は積み重ねられていく」がリーディングされた。

 なお、このイベントのリポートと各出演者のインタビューは「THIS」Vol.1 No.2に掲載され、佐野のパフォーマンスは付録の8cm CDに収められている。

(増渕俊之)



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