佐野元春が誰かのために歌詞や曲を書いたりすることはそれほど多くはない。共作における最も古い例は、19歳のときに出逢い、その後、パートナーとして3年あまりの充実した歳月を共にした佐藤奈々子とのコラボレーションになるだろう。「綱渡り」に始まり「サブタレニアン二人ぼっち」「ピアニストの恋人」など、奈々子がリリースした初期の3枚のアルバムのほとんどの楽曲を共作している。
1980年のレコード・デビュー後にも佐野は他のシンガーやバンドに楽曲を提供しているが、その場合にはホーランド・ローズというペンネームを使うことが多かった。ホーランド・ローズ名義の代表作といえば、1984年に松田聖子のために書き下ろした「ハートのイヤリング」だが、これは作詞の松本隆との共作ということになる。
さらに翌85年には石川セリの妹ロミーのソロ・アルバムのために「カリフォルニア」という曲を書いている。作詞を友部正人が担当しているこの曲では、友部が書いた言葉のセンテンスを生かすためにトーキング・ブルースとラップを融合したボブ・ディラン的な世界が垣間見られる作品に仕上がっている。
'90年代の共作といえば、日本テレビのバラエティー番組「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」のバイク・ツーリング・チーム「生殺し」(のちにアンディーズと改名)のリクエストから生まれた「フリーダム」が記憶に新しい。
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'98リリースCD 『HOME』 ─ John Simon
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そして佐野の最も新しい共作曲が、アルバム『ザ・バーン』のプロデュースを手掛けたジョン・サイモンのアルバム『HOME』のために書き下ろされた「So
Goes The Song」だ。サイモンが『ザ・バーン』に「ズッキーニ - ホーボーキングの夢」を提供してくれたことに対する返礼として佐野が書き送った英語の詩にサイモンが曲を付けたものだ。
佐野との共作についてサイモンは「MOTOの俳句的な詩を音楽化する作業だった」とコメントしている。