ひとことで言ってしまえばデビュー20周年記念のベスト盤だ。だが1曲目に収録されたデビュー曲「アンジェリーナ」を聴いただけで“ベスト盤”にありがちな予定調和はすぐに破壊されることだろう。
					
					
					 
						 インナーのクレジットによれば、このアルバムにオリジナルのまま収録されたのは32曲のうち10曲だけ。実に3分の2以上の曲は大胆な再ミックスや編集を施され、あるいは新たにレコーディングし直された。 
						 
						 特に「アンジェリーナ」を初めとする初期の曲の再ミックスは圧巻だ。原曲のニュアンスを損なうことを避けながらも、まるでひとつひとつのトラックの音を丁寧に取り上げてほこりを払い、もう一度ピカピカに磨き上げて元の場所に戻したようなビビッドな輝きを与えたこの再ミックスは、その結果 
						として佐野の作品が持つ普遍性を見事に証明して見せたということができるだろう。
						 
						「Rock & Roll Night」や「SOMEDAY」といった、ある意味で手をつけることが大変難しい“クラシック”をも、今日的な問題意識に呼応した“現役”の曲として蘇生させたこの仕事の意義は高く評価されるべきだ。
						 
						 もうひとつ特筆されるべきなのはこのアルバムのために再レコーディングされた2曲、「インディビジュアリスト」と「君を探している(朝が来るまで)」だろう。「インディビジュアリスト」はスカ・ビートをより強調した新鮮なアレンジで、原曲のアレンジに対する一部の疑問に答えを示したものと受け止めることが可能だ。
						 
						 圧巻なのは「君を探している(朝が来るまで)」で、フォーク・ロック仕立てを目指しながらも中途半端な出来に終わったオリジナルに対し、このアルバムではザ・バーズへのオマージュとなる演奏とボブ・ディランへのリスペクトにあふれたボーカルでこの曲をようやく完成させた。このアルバムのベスト・トラックと呼んで差し支えないと思う。 
						 
						 単なるメモリアルではなく、過去の作品を現在という時代相の中に読み込み、その今日的な意義を印象づけようとする気概にあふれた「his 
						words and music」だ。 
					
          (西上典之)
           ●関連サイト
            The 
            20th Anniversary Edition