08 | 永久保存版「佐野元春ライブ・アンソロジー」
1999-2000


 ダディがいる。アベちゃんがいる。アキラがいる。ギンジもいる。タカシもオサボンもいる。

 1980年のルイードからずっと佐野元春のライヴを追い続けてきた僕にとって、この20年間に渡る彼らのライヴ・ヒストリーをほぼ年代順に32曲収録したこのビデオ作品は、本当に懐かしく、せつなく、うれしいものだった。特に1994年の「ザ・サークル・ツアー」、そして横浜スタジアムの「LAND HO!」での演奏は佐野とザ・ハートランドと共に歩んで来た14年間を改めて思い起こさせ、感動的だった。

 1996年以降のザ・ホーボーキング・バンドとのパフォーマンスも含めて、ポジティヴでシニカルで、優しくて激しくて、時にジャンプしたりダンスしたりもする佐野元春がここにはいる。ある瞬間には全身で歓びを表現し、またある瞬間には怒りで全身を打ち震わせる彼がここにはいる。

 このアンソロジーの最も素晴らしいところは、「ロックンロール・ナイト・ツアー」から「20thアニバーサリー・ツアー 」まで、それぞれの時代における佐野のオン・ステージでの真摯な態度をカメラが見事に捉えている点だろう。

 たとえば「99ブルース」「おれは最低」「ブルーの見解」「シェイム」など、痛ましい心象の刻まれたメッセージがリアルに響く楽曲をセット・リストに加えるとき、佐野はそれにふさわしい演出を考えるだろう。しかし、いざライブがスタートすれば、彼のパフォーマンスはその演出を超えて迫真と化していく。

 個人的に傑作だと断言してしまいたい演奏及び映像は、1993年の「僕は大人になった」と「ニュー・エイジ」、1996年の「コンプリケーション・シェイクダウン」と「ビー・トゥイステッド」、そしてジョン・サイモンとガース・ハドソンをゲストに迎えた1998年の「7日じゃたりない」だ。

(下村 誠)


●このビデオ/DVDの詳しい情報は、「佐野元春ライブ・アンソロジー 1980-2000」コーナーまでどうぞ。



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