ダディがいる。アベちゃんがいる。アキラがいる。ギンジもいる。タカシもオサボンもいる。
1980年のルイードからずっと佐野元春のライヴを追い続けてきた僕にとって、この20年間に渡る彼らのライヴ・ヒストリーをほぼ年代順に32曲収録したこのビデオ作品は、本当に懐かしく、せつなく、うれしいものだった。特に1994年の「ザ・サークル・ツアー」、そして横浜スタジアムの「LAND
HO!」での演奏は佐野とザ・ハートランドと共に歩んで来た14年間を改めて思い起こさせ、感動的だった。
1996年以降のザ・ホーボーキング・バンドとのパフォーマンスも含めて、ポジティヴでシニカルで、優しくて激しくて、時にジャンプしたりダンスしたりもする佐野元春がここにはいる。ある瞬間には全身で歓びを表現し、またある瞬間には怒りで全身を打ち震わせる彼がここにはいる。
このアンソロジーの最も素晴らしいところは、「ロックンロール・ナイト・ツアー」から「20thアニバーサリー・ツアー
」まで、それぞれの時代における佐野のオン・ステージでの真摯な態度をカメラが見事に捉えている点だろう。
たとえば「99ブルース」「おれは最低」「ブルーの見解」「シェイム」など、痛ましい心象の刻まれたメッセージがリアルに響く楽曲をセット・リストに加えるとき、佐野はそれにふさわしい演出を考えるだろう。しかし、いざライブがスタートすれば、彼のパフォーマンスはその演出を超えて迫真と化していく。
個人的に傑作だと断言してしまいたい演奏及び映像は、1993年の「僕は大人になった」と「ニュー・エイジ」、1996年の「コンプリケーション・シェイクダウン」と「ビー・トゥイステッド」、そしてジョン・サイモンとガース・ハドソンをゲストに迎えた1998年の「7日じゃたりない」だ。
(下村 誠)
●このビデオ/DVDの詳しい情報は、「佐野元春ライブ・アンソロジー
1980-2000」コーナーまでどうぞ。