13 | 月刊カドカワに連載のコラム「TAKE BACK GOOD」
1989-1990



 1990年5月号から1991年8月号まで、「月刊カドカワ」誌で連載された「TAKE BACK GOOD」は、佐野元春の約1年半の活動をほぼリアルタイムでみずから綴ったコラムであり、それと同時に彼の“視線”や“思考”を知ることのできる貴重な記録だった。

 ニール・ヤングとの出会いについて書かれた「CHAPTER-1」から本やレコードやビデオについて語った「THE FINAL CHAPTER」まで、「MOTO INDIVIDUAL NOTE」というサブタイトルを冠した全16章のコラムはそれぞれに示唆に富んだものであり、チャーミングなアフォリズムをはじめ、佐野ならではの知恵の数々が散りばめられている。

 なかでも'70年代前半という特異な時代に想いを馳せながら「僕の世代の気分」について率直な筆致で綴った「さよならRevolution 1〜2」は彼と同世代の筆者には特に印象に残った。J.D.サリンジャー、ジャック・ケルアック、ボブ・ディラン、アル・クーパー、ジム・ピューター、糸居五郎、オノ・ヨーコなど、コラムに登場する名前も実に彼らしいものだ。

 ロック、楽器、映画と自身との関わりを振り返った佐野元春の「MY BACK PAGES」も含むこの連載コラムが一冊の本にまとめられていないのは惜しい。

(吉原聖洋)



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