14 | 限定版クリスマス・ボックス
1989-1990



 80年代のミュージック・シーンに初めて登場した手法がいくつかある。シングルでありながらアルバムと同サイズで45回転の12インチ・シングル、プロモーションビデオ・クリップ、カセット・ブック……など。パッケージにおいても佐野元春は常に新しいことにトライしてきた。

 その後は珍しくない方法となっていったものの、12インチ・シングルやビデオ・クリップなど、アイテムとしての表現方法を新しく取り入れ、紹介してきたのは、常に佐野元春だったと言ってもいいのではないだろうか。
 
 

 1989年12月、佐野元春はクリスマスのための限定アイテムとして「限定版クリスマス・ボックス」をリリースした。これは、アルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』からシングル・カットされた「雪――あぁ世界は美しい」に、カップリング曲として「聖なる夜に口笛吹いて」と「ふたりの理由」を収録したCDシングルと、「雪――あぁ世界は美しい」のプロモーション・クリップが収録されたビデオ、そしてクリスマス・カードがひとつのボックスにパッケージングされていた。

 “限定版”として数を限ってリリースする手法も当時としては珍しかったが、CDシングルとビデオをひとつにパッケージングし、それを2,900円という安価な価格でリリースしたのも画期的だった。紺地に金の模様が入ったボックスをクリアなケースに収納した美しいセットは、心ときめくクリスマス・プレゼントだったに違いない。限定盤だったということもあって、ファンの間では貴重なレア・アイテムとして大事にされている。

(池田聡子)



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