06 | スタジオ・ライブ「Goodbye Cruel World」
1990-1992



 1991年4月1日、日本で初めての民間衛星放送“WOWOW”がスタート。開局記念番組の一環として佐野元春 withThe Heartlandによるスタジオ・ライヴが放映された。

 普段のステージで見られるエネルギッシュな演奏とは形態を変え、過去の曲をすべてアコースティック楽器で表現する、いわゆる「アンプラグド」なセッションだった。

 収録は'91年3月1日、深夜から早朝にかけて都内にある民営のスタジオで行なわれた。演奏曲は「Question」「ジュジュ」「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」など全10曲。

 このセッションでの佐野とハートランドの演奏は秀逸だったため、シングル「また明日...」のボーナス・トラックとして「ジュジュ」。シングル「誰かが君のドアをたたいている」のボーナス・トラックとして「愛のシステム」。'92年にリリースされたアルバム『No Damage ll』には「99ブルース」。また、'94年の3枚組みライブ・アルバム『ゴールデン・リング』には「ヤングブラッズ」が、それぞれスタジオ・ライブ・ミックス・バージョンとして発表されている。

 

 1991年4月。「Goodbye Cruel World ── この残酷な世界にさようなら」と題されたこのアンプラグド・セッションが行われた3ヶ月前、中東で湾岸戦争が始まっていた。佐野は番組にこんなメッセージを寄せていた。

「'60年代の前半に、ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジではキューバ危機に反応するフォーク詩人たちのムーヴメントがあった。1991年現在、中東における戦争、バルト3国における独立運動、デタント後の新しい可能性を模索して世界は再び大きく揺れている。このライヴはテレビを使ってメッセージを送る実験の場としたい」。

 この日演奏した「愛のシステム」で、佐野は即興で歌詞を変えてこう唄った。

「アメリカの清らかな海、それは君の果てしない砂漠」。

(高野ヒロシ)



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